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シンが異変に気付いたのはそれか少ししてからだった。
何が異変かまでは分からないが、店内にも別に変わったところはない。
ただ今シンが感じているものは、何度も感じたことがあるもの。
それは今の世界ではなく、自分がいた世界、自分が兵士をしていた時のもの。
もちろんそれは良くないことが起きる前触れ。
「……強盗?」
「この近くで?」
「逃走中?………」
何人かが携帯を見ながら呟いた。
そしてその呟きを耳にしたものは自分の携帯で確認する。
近くで強盗事件、犯人は逃走中。
瞬く間に店内の不安は増大する。
「……お姉ちゃん………」
「大丈夫よ、ここに来ないって、こんなところで捕まったら犯人としては一生の恥よ」
軽口をとばすかがみもその表情は冴えない。
来ない可能性は高いけどゼロではない、そしてもし強盗がここに来れば、そう考えれば少女達の恐怖は無理もなかった。
命の危機、この国でそれを経験する人はあまりにも少ない。
三人の少女は誰とも言わず、手を重ね合わせる。
だけどつかさの震えは止まらなかった。
「はうっ………」
今にも声を出して泣きそうになってしまう時、つかさの頭に手が乗せられる。
姉でも、親友でもない、その二人の手は今、自分の手と握り合っているのだから。
「大丈夫、絶対に守るから」
言葉と一緒に手はつかさの頭を撫でる。
見上げるとそこには今日は初めて会ったはずの女の子の姿。
その瞳には強い意志が宿っていた、まるで自分の想い人の様な。
「紅茶をお持ちしますね、あっ、これは私からのサービスです」
そしてシンは席を外す。
今の自分に何ができるのか
不安の根本は所在不明、それを追っかけるのなんて非効率極まりない。
だったらシンの役目は少女達の不安の少しでも和らげること。
もしここに強盗が来たら、少女達を命に掛けても守る。
それはシンにしかできないこと