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「お帰りなさいませ、こちらがメニューとなっております」
「ど、どうも………」
手慣れた様子のシンとは対照的に、緊張した様子でメニューを受け取る三人。
そして三人はちらちらとメイド姿のシンの方を見やる。
といっても別にこれはシンの正体を疑っているというものではない。
「本日はメイド週間となっております、そして私は今日皆様のお世話をさせてもらいますアスカ・ラングレーです☆」
一見客にありがちな視線の三人に、シンはポーズ付きで自己紹介を始める。
といっても、三人からすれば初対面の人を相手に、それで打ち解けるというのは無理であり、三人はますます困惑な表情を強くする。
「あの、こな、じゃなくて泉さんっています?」
「すみません、こなたお姉様はちょっと、他のご主人様のお世話をなされてて…ですが皆様のことはお姉様から聞いていますよ
そちらが完璧超人のみゆきさん、そしてお料理上手なつかささんと、ツンデレのかがみさん」
「完璧だなんてそんな………」
「こなちゃん、喋ってるんだ………」
「でもよく顔と名前が一致したわね」
照れている二人とは違うかがみの言葉にシンは思わず呻きそうになる。
もちろんわざわざこなたに聞かなくても三人の名前どころか、もっと色々なことまでシンは知っている。
しかし今回ではそれはシンにとってマイナスである。
本人達のことを知っていればいるほど、それは自分の正体を怪しまれる可能性があるのだ。
「写メですよ、写メを見せてもらって! あっ、メニュー決まりましたか?」
動揺を悟られずにその場を取り繕うシンであるが、内心は冷や汗タラタラである。
かがみは一応納得したのか、メニューに目を通し始める。
シンは今回の最大の敵はやはりかがみであると確信する。
元々のツッコミ役に加え、頭の回転も速いかがみが、一番シンの正体に気付く可能性が高い。
知力ではみゆきも警戒すべきなのだが、聖人君主とうたわれるだけあって、人を疑うことをしない。
つかさに至ってはさらに超が付くほどのお人良しであるので、無警戒でも問題はない。
つまり、かがみにさえ気を遣えばどうにかなる! そう思うとシンの心は少し軽くなる。
三対一ではない、一対一のイーブンなのだから。
最もシンは一対一でもこの三人の誰にも勝てないのだが、そんなことは彼方である。
「それでは少々お待ちください」
メニューを回収し頭を下げるシン、その顔には自信に満ちたものだった。