「むり」

「はぁ!? なんでだよ!?」

「今常連さんが来た」

 再びこなたの首根っこを掴もうとしたシンの手は空で震える。

 どうしてこんな客が少ない時間に来るのか? 愚問である、常連だからである。



「まあ、大丈夫じゃない? つかさ達システムよく知らないだろうし、注文の時行かなかったら」

「いや、そうなんだけど………」

 この時シンは予感していた、いや確信していた。



「アスカちゃん、五番テーブルお願い」

 別の客の相手、トイレ、レジ打ち、とあっという間に盾ははがされ、たまたま今空いていたシンが結局は三人の担当になった。



「はぁ〜」

「なんていうか、分かりやす過ぎて逆に引くね」

「うるさい! ……声はこんな感じか?」

「いつもよりちょっと地に近い」

「あ〜あ〜、どう? こんな感じ?」

「うむ、OK! 幸運を祈る」

 頷くとこなたは『愛情』一杯の料理を持ち店内に出た。

 当然といえばそうなのであるが、シンは接客の時は女声である。

 なぜそんな声変わりができるかはコーディネータだから、ザフトレッドだからと色々推測されているが、推測の域をでない。

 それに今は問題はそこではない。



「はぁ〜」

 シンは三人に自分の過去を話した。

 それは自分を知って欲しかったから。

 そう思わせるくらいに少女達はシンに取っては大切な存在。

 だがこれは違う。これは絶対に知られてはいけないことなのだ。

 知られたら、それこそ今まで築き上げてきたものが全てを無くす。



 その怖さをシンは知っていた。

 ただこういう危機の向かえ方ではなかったが

 だからといってこれに負けるわけにはいかない、そして逃げ出すことも



「アスカ・ラングレー、行きます!」



 シンの譲れない戦いが始まった。





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