「た、大変だよ!」

「あらこなたお姉様どうしたの? はしたない」

 血相を変えてバックに戻ってきたメイド姿のこなたを、いつも自分が言われている言葉で窘めたのは黒髪ツインテールの女の子。

もちろんこちらもメイドの格好である。



「いやいや本当に大変なんだって、シン」

「今はその名で呼ぶな! 他のバイトにバレるだろ?」

 ツインテール少女はこなたの首根っこを捕まえ、壁の方へと連れて行く。

 このツインテール少女こそシン・アスカ、店での名前はアスカ・ラングレー。もちろん長い髪はウイッグである。

 この店でシンは男として雑用、アスカちゃんとして接客、という半分半分の割合で入っている。

 ちなみにこの事情を知るものは店長とその数名しか知らない。



「で、何が大変なんだよ?」

「つかさ達が来てる」

「なっ!?」

 シンは慌てて、かつ静かに店内を覗くと確かに見慣れた三人の少女がそこにいた。

 三人は居心地悪そうにしつつも、視線を周りに向けている。

 それは間違いなく知り合いを探しているという行動である。



「おいこなた〜!」

「わたしじゃない、わたしじゃない」

 全力で両手をふるこなた。

 なんでライバルにそこまで協力しないといけないの!?

 という抗議を言えぬまま。



「あいつら一体なんの用で………」

「さあ?」

 首を傾けるもののこなたは察しがついていた。彼女もまた恋する乙女なのだから。

 だからその理由はシンにはとても言えないのである。



「でどうするの?」

「どうするもこうするも、こなたお前が担当しろよ」

 確かに友人なのだから、言えばこなたが担当になるはずである。

 しかしそこはシン・アスカ、運命の女神は彼に微笑まない。





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