2
「た、大変だよ!」
「あらこなたお姉様どうしたの? はしたない」
血相を変えてバックに戻ってきたメイド姿のこなたを、いつも自分が言われている言葉で窘めたのは黒髪ツインテールの女の子。
もちろんこちらもメイドの格好である。
「いやいや本当に大変なんだって、シン」
「今はその名で呼ぶな! 他のバイトにバレるだろ?」
ツインテール少女はこなたの首根っこを捕まえ、壁の方へと連れて行く。
このツインテール少女こそシン・アスカ、店での名前はアスカ・ラングレー。もちろん長い髪はウイッグである。
この店でシンは男として雑用、アスカちゃんとして接客、という半分半分の割合で入っている。
ちなみにこの事情を知るものは店長とその数名しか知らない。
「で、何が大変なんだよ?」
「つかさ達が来てる」
「なっ!?」
シンは慌てて、かつ静かに店内を覗くと確かに見慣れた三人の少女がそこにいた。
三人は居心地悪そうにしつつも、視線を周りに向けている。
それは間違いなく知り合いを探しているという行動である。
「おいこなた〜!」
「わたしじゃない、わたしじゃない」
全力で両手をふるこなた。
なんでライバルにそこまで協力しないといけないの!?
という抗議を言えぬまま。
「あいつら一体なんの用で………」
「さあ?」
首を傾けるもののこなたは察しがついていた。彼女もまた恋する乙女なのだから。
だからその理由はシンにはとても言えないのである。
「でどうするの?」
「どうするもこうするも、こなたお前が担当しろよ」
確かに友人なのだから、言えばこなたが担当になるはずである。
しかしそこはシン・アスカ、運命の女神は彼に微笑まない。