『トップシークレット』





「じゃにー」

「また明日な」

 別れの言葉を終えると少女と少年は歩いて行く。

 それをただなんとなく見送る三人の少女。

 いつもならば放課後は受験の為の勉強会のはずである。

 それなのに学校終了と同時に解散になったのはなんのことはない、少女と少年、泉こなたとシン・アスカがバイトだからである。



「いいなぁ」

 見送った一人の少女、柊つかさが呟く。

 それに無意識に頷く少女、柊かがみと高良みゆき。



 好きな人と一分一秒でもいたいと思うのが恋のする者の常であり、それはこの三人にとってももはや例外ではなかった。

 そして先ほどシンと一緒に歩いていたこなたもその一人。

 つまり四人は親友同士でありながら、五角関係というものを築いていた。



 そんな中心にいるシンはバイトの掛け持ちをやっているのだが、今日はこなたと同じバイト、

しかもそのこなたはシンとは一つ屋根の下で暮らしているのだから、三人の焦燥は募るばかりである。



「ねえ」

 小さな声を出したのはかがみ。

 そして次は自分を奮い立たせる様に少し大きな声で

「行ってみない? 今から」

 幸いにしてこなたのバイト場所は、去年行ったから分かっている。予約も必要ではない。

 しかし、つかさとみゆきはかがみの方をただ見つめるだけであった。



「ち、違うわよ! わ、私はただ、シ、シンのバカの仕事ぶりを茶化しに行きたいだけで、そ、それ以上の意味はないから!」

 かがみは一気かつ、詰まりながら早口でまくし立てる。

 わざわざそんな無関心を強調しても、もはやかがみの想いをつかさもみゆきも知っているし、かがみの提案の真の意味も理解している。

 かがみもそのことはよく分かっているのだが、かといって素直じゃないという性格はそうそう治せるものではない。

 特にこういう恋の件については。



「うん、見にいこ!」

「はい、私も時間の方は大丈夫です」



 もちろん二人としてもこの提案に反対する理由はない。

 好きな人を見に行く、のだから。





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