12
「ああ、終わった………」
「うん、やっとバイト終わりだね〜今日は長かったー」
「……ああ、そうだな」
こなたのボケにシンは突っ込む力もなく、溜息と共にロッカーを閉める。
この部屋を出れば三人が待っている。
そして待っているのは別れ。
今までの全てがなくなる別れ。
それを思いシンの足取りは重い。
「ほらほら、つかさ達が待ってるよ〜」
急き立てるこなた、いつもとは真逆である。
「あんたに今のオレの気持ちが分かるもんか」
恨めしげな視線をシンはこなたに向けるが、それは八つ当たりというものである。
「あんたがこんなバイトに誘わなければ………、あんたさえいなければ………」
そもそもこなたと出会わなければ、三人と知り合うことさえなかったのには、完全に理の外である。
それだけ今のシンは追い詰められた状況にあるといえる。
「はいはいって……今にも種割れしそうだね〜」
しかしこなたは動じることなく、シンの八つ当たりをかわす。
これくらいで動揺していたらシンのお守りは務まらない。
もっともそれをシン本人が聞いたら、今度こそSEEDの因子が発動するであろうが。
階段でビルを出ると、そこには制服姿の三人。
「うっ………」
それを確認しシンは呻く。
どんなに巨大な敵だろうと、どんなに強い相手でも怯まなかったシンが、前に出るのを躊躇う。
逃げ出したいとさえ初めて思うことであった。
「ほらほら♪」
そんなシンをこなたは手を持ち引っ張っていく。
別にこなたはシンと三人の関係を壊れるのがみたいわけではない。
こなたは分かっているのだ、三人がシンに対してどういう答えを出すのか。
そしてそれを踏まえシンの狼狽ぶりを見るのは楽しいものだった。