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「でっ、それあんたの趣味?」
「違う! こっちの方が時給がいいんだよ!」
「あんたプライドはないのか?」
「そんなもんとっくにズタボロだ!」
エリートは遠い過去の称号。
「では、男の方が好きということは………?」
「そういうところだけはオレ普通だと思ってるし」
『異常者』とは自覚しているらしい。
「シンちゃん、いつ髪伸びたの?」
「ウイッグ!!」
最後は机をバンっ!
「はぁはぁはぁはぁ」
肩で息をするシン。
ちなみにシンのみ周りの目を気にして小声である。
なぜ自分だけがこうも苦労しなくちゃならないんだ!?
相変わらずの世の理不尽さを恨むシン。
「そうね〜私達も考えたいし、結論は帰る時に言うわ」
「なんだよ、言えよ! もうひとおもいに引くって!!」
「シンさん、いえ、ラングレーさん落ち着いて下さい」
「これが落ち着けるか!」
「だってシンちゃん、じゃなかったラングレーちゃん、今はバイト中でしょ?」
「うぐぐ………」
もちろん今のもシンのみ小声である。
まあちょっと見たらすでに女の子のしぐさではほぼないが
「というわけでラングレー、飲み物お代わりよろしく」
「お恥ずかしながら、私も」
「わたし、この『愛情タップリホットケーキ』って頼んでいいかな?」
「かしこまりました!!」
女声で答えるシン。
もちろん冷静になったわけではなく、完全に頭には血が上っている。
だから気付いていない、少女達が女装して働くシンをどう思ったか。
だが少女達はそれをシンに今伝えてやる義理はない。
自分達に隠し事して騙そうとしたのだから。
『ラングレー』の怒った足取りを見て、三人は目だけで笑い合った。