地図を片手に最寄りの駅から歩いて、十数分。

 被っている帽子のツバを手で押さえ、目の前にそびえるビルを見上げる。

「……来てしまった」

 結局は、『正月だから』『一般人はこんなところに普通はこない』という言葉と、そして抑えられない好奇心に負けて、

 私はここ、コスプレ喫茶に足を運ぶこととなった。



 かんかんかん



 狭い入口に、勾配のきつい階段、明らかに一般の世界から隔離されているワールド。

 でもなんていうか、それが落ち着く。



「いらっしゃいませー!」

「ど、どうもー」

 ドアを開けると着物をアレンジした格好で迎えてくるウェイトレスさん。

 新規ということと無料券を説明すると、席へと案内してくれた。



 正月らしく、店員さんがなんらかの和風のキャラのコスプレをしている。

さすがにこういう店で働こうと思ってるだけあってレベルが高い。

 それは満足なんだけど、お客さんが私以外全員男。……まあそんなに多くないから気にならないけど。



「ようこそ、おいでくださりました」

 水とメニューを持ってきたのは、席に案内してくれたのとは別のウェイトレスさん。

「本日は謹賀新年ということで、和服週間となっています」

 予想していたとおり説明してくれるウェイトレスさん。

 でもこのウェイトレスさんの格好は



「あっ、私和服が上手く着こなせなくて、こんな格好に」

「ああ、そうなんですか」

 私の疑問の目にウェイトレスさんが恥ずかしそうに答える。

 ちなみにウェイトレスさんの格好は、侍と宇宙人が一緒にいるという世界観をもつ

国民的週刊雑誌に連載されている漫画のある組織の制服である。

 だからまあ一応和服と言えなくもない。



「私見てますよ、おもしろいですよねあれ」

「ただマヨネーズのかけ過ぎには辟易しやすがね」

 コスプレの元ネタに本当にそっくりな声を出すウェイトレスさんに、私は驚く。

 そっくりというか本人、いや合ったことはないけど

 こんな芸もできるなんて予想以上にレベルがここは高い。

 それによくよく見るとこのウェイトレスさん色白で、女の人では背も高くてかなりの美人。

 これはかなりついている! 来て良かった!



「メニューいかがしやす?」

「じゃあこれをお願いできますか?」



 しかも無料で



 ありがとう誕生日

 ありがとうお兄ちゃん





戻る   別の日常を見る   進める