「ヒマだ」

 店内の掃除も終わって、レジ前で立ってること30分、その間に来た客0、現在店内の客0。

 昼間ならそこそこ客が来るんだけど、夜になると住宅地から離れている上に、この寒さ。

「そりゃ来ないよな〜」

 オレは溜め息を付きながら、おでんの温度調節を始める。



 こういう時にバイト仲間がいればいいんだけど、これだけの閑古鳥だからシフトもオレ一人。

 馴染みの配送の人が来るのにも後数時間はある。

 退屈すぎる



「はあ」

 明らかに時間の無駄なのでオレは缶コーヒーをレジに通し、バックヤードに下がる。

 鈍ってるとはいえ、こう見えても元軍人のオレは気配には人一倍敏感だ。

これくらいの広さの店だったら人が入ってきたらすぐに分かる。最も誰も来ないだろうが



 とはいえ相変わらずの特技の無駄遣いとも思えるけど

「おっ、これ新作出るのか、こなたに貸してもらうかな」

 そんなことはもはや些細なことと思うようになっていた。





「ん?」

 大体の週刊誌を読み終え、レポートに必要な本を読み始めた頃に人が入ってくる気配。

 店内カメラを見ると案の定だ



「なんだこれ?」

 思わず眉を顰めるオレ。

 店内を動き回っていたのは某未来の猫型ロボットの様な、ドラム缶に手足が出てる様なヤツだった。

 なんていうか、色々な意味で怪しい。

 とはいえ一応客には違いない。



「しゃあない、行くか」

 オレは本を置いて何分かぶりに店内に出た。





「いらっしゃいませ」

 オレの牽制の挨拶に怪しげな客はビクンと体を震わせ、オレの視界から消える。



 怪しい

 どう見ても逃げた様にしか見えない。

 こいつほ本当にホンモノかもしれない



 おもしろいじゃないか

 流れる緊張感にオレは笑いを噛み殺す。

 久しぶりの戦士モード。

 ユル〜クはなってるけど腑抜けにはなってないと自負してる。

 それはもしもの為に必要だから

 そして今回はまたとない実戦、このオレがいる限りここは世界一コンビニ強盗をしにくい店だ。



 この店のものは全て守ってみせる!





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