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全員そろった私達はあてがわれてる、控え室へと向かった。
「貴重品を出したよな?」
陵桜学園の文化祭は生徒だけでなく、外部からも人がやってくる。
だから唯一の男子であるシン先輩が、ここまで付いてきたのは皆の携帯と財布を預かるため。
シン先輩から悪意を持って物を取るのは、並大抵の人ではとても無理なのを全員が知っているし、
何より信頼している人に持っていて貰った方が安心する。
この事は一部の先生達から苦情が来たけど、黒井先生の口ぞえと何より私達全員の希望という事で許可が下りた。
「じゃあ、もう行くからな」
「ちょっと、待った!」
シン先輩が嫌な顔をしたのは、止めたのが泉先輩だからだろう。
今までのパターンなら泉先輩が、難問でシン先輩を困らせるというものだったけど………
「最後なんだし、裏方に徹してくれたシンから何か一言!」
「えっ、なっ、そんないきなり!?」
確かに難問だけど、泉先輩の言うことはもっとも。
今回のこのチアダンス、シン先輩がいなかったらここまで来れただろうか?
ひょっとしたら別の人がシン先輩の代わりをやってくれていたかもしれない。
でも実際に、皆の悩みを聞いたり、仲をとりもったりして、チームとしてまとめてくれたのは間違いなくシン先輩だ。
もちろん小さな不満はある、だけど皆シン先輩に感謝している。
だからこうしてシン先輩の周りに集まっていく。
「……そういうのは事前に言えよ………
……最初にゆたかからこの話を聞いたとき、絶対無理だと思った。
ゆたかの体もそうだし、そんな酔狂に付き合うのが何人もいないと思ってた」
私も似た思いだった。
ゆたかの気持ちは分かるけど、それは無謀と思えた。
でも
「ゆたかは体を壊すことなくここにいるし、誰一人脱落することなくここにいる
最初が1番難しかったんだ、今更お前達がこんなところでつまずくわけがない
絶対に失敗しない、オレはそう信じてる!」
本当にシン先輩はそう思ってくれてるんだろう、その瞳はいつものきついだけのものではなく、何度か見たことがある真剣なもの。
……でもここでそういうことを言うのは………
「……シン、振ったのはわたしだけど…ごめん、重い」
「えっ!?」
こうして私達は本番直前にプレッシャーを加えられた