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「ううっ」

 呻き声を出して身を震わせたのはわたしか、それとも別の誰かだったのでしょうか

 そんなことも分からないくらい今のわたし、いえ、わたしたちは緊張しています。

 わたしたちもまだ控え室の段階では、プレッシャー掛けてきたお兄ちゃんをからかえるくらいの余裕がありました。

 でもこうして舞台に立つと、やっぱり違います。もの凄い緊張感です。



「こ、小早川さん、わ、ワタシ、ふ、震えてない?」

「だ、大丈夫だよ………」

 目が泳いでいる田村さんに一体どう応えたら良かったのでしょう?

 良くは見えないけどみんなも緊張しているのが空気で伝わってきます。

「……お姉ちゃん」

「ゆーちゃん、失敗したらごめん」

 振り返って前もって謝るお姉ちゃん。

 その顔にはいつもの余裕を漂わせているこなたお姉ちゃんではありませんでした。

 引きつってて、今にも泣き出しそうな顔でした。

 隣のみなみちゃんも日下部先輩も



 失敗する



 そんなことが頭を過ぎると同時に別のことが浮かんできました



 失敗ってどういうこと?



 確かにこのままだったら、今までやってきたことが水の泡です。



 お兄ちゃんに手伝ってもらって

 みんなに協力してもらったことが

 でもそれはチアダンスが踊れなかったから?



 違うよ、そうじゃないよ!



「みなさん」

 出した声は大きくはなかったけど、自分が思ってるよりも震えてなくて



「お兄ちゃんはああ言ってくれましたけど、ここまで来れたのは皆さんのお陰です

 やっぱりこれだけの人数が揃うと、やっぱり喧嘩もしちゃうのかなっと思ってたんですけど、そんな事なくて」



 本当にみんな優しくて、今まであんまり話せなかった人、会ったこともない人とも話せて、仲良くなれて

 その人とだけで練習もしちゃったりして



「苦しかったけど、それ以上に毎日がとても楽しく笑いながら、こうして最後まで来ることができました

 だから

 最後もわたしたちらしく楽しんで行きましょう!」

 凄く不自然と思えるくらいに自然に笑ってそれを言うことができました。



 自分の言葉で雰囲気を変えれたなんてことは思わないけど、きっとちょっとしたきっかけにはなれたんだと思います。



「ふふっ」

 誰かが小さく笑いました。



「そうね、これくらいミス陵桜の時に比べたらどうってことないわ」

「はい、あの時は自分以外のステージの人は皆さん敵でしたから」



「小早川さんが代表でやっぱり良かった」

「うん、とってもしっかりしてるもんねゆたかちゃん」



「そんな小早川はわたしが育てた」

「みさきち寝言は寝て言いなよ?」



 みなみちゃんと、田村さんが手を伸ばしてそれぞれ手をわたしの手に重ねてくれました。

 ポンポンが手には付いていたけど、二人の体温はちゃんと感じることができました。



「え〜ではね、まずこの文化祭のオープニングセレモニーから始めたいと思います」

「代表は小早川ゆたか―――」



 みんなの名前を呼び上げてるのはなんとお兄ちゃんでした。

 だからお兄ちゃんの顔は緊張してたのかな。

 でも読み上げる名前はとっても誇らしげで、どこか楽しそうに聞こえます。

 やっぱりわたしたち繋がってる、チームだね



「以上9名、曲目は『もってけ!セーラふく』」



 そして幕が上がりました。





〜 f i n 〜   






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