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 玄関から外へ出ますと清々しい朝の光が舞い降り、秋の風が頬をなでます。

 まさに絶好の文化祭日和といえる天候です。



「おはようございます」

「おはようございます」

 すでに家の前で待っていて下さったみなみさんと挨拶を交わし、共に学校へ向かいます。

 私達は本日の文化祭のオープニングイベントを務めるので、一般生徒よりも早めに登校します。

 それでもその集合に充分すぎるほど間に合う時間に、家を出たのはやはりいてもたってもいられないからです。

「みなみさんは昨日は早く寝られましたか?」

「はい…いえ、少しだけいつもより遅かったです」

 そう言うみなみさんの顔は言葉とは裏腹に、笑顔がこぼれていました。

 どうやら緊張のしすぎで寝れなかったわけではなさそうです。



「つかさ先輩からメールが来て、その後にゆたかとメールをしていたら」

「そうですか」

 やはりつかささんは全員にメールを送ったのでしょう。

 機械を通して打たれた文字でしたが、内容はつかささんらしい微笑ましい文面でした。

 あのメールで私を含めて、皆さんの緊張がどれだけ解れたことでしょう



「私も少しだけメールを交わしましたよ」

「シン先輩とですか?」

「かがみさんとです。シンさんは早く寝るように言うでしょうから」

 私の苦笑に、みなみさんも苦笑で頷かれます。

 みなみさんも今回の事を通じて、あの方の事をより知られたのでしょう。以前のようにどこか警戒しているということが無くなりました。

 あの方だけではありません。かがみさんや日下部さん、峰岸さんとも私が中に入らずとも、お話をしているのを見ていました。



「……皆さんも早く登校してくるのでしょうか?」

「少し門で待ってみましょうか」

 電車の関係上、私達が早くに学校に着こうとしたら、他の方よりも先に着くことが多いです。

 それでも、もし皆さんが私達と同じ気持ちなら、そんなに門の前で待つことはないのではないでしょうか?



「はい。……こんな日だから皆で登校したいです」

 頬を赤らめて呟くように言うみなみさん。

 他人と接するのが少しだけ苦手なみなみさん。だからその光景はとても嬉しいことです。

 みなみさんだけはありません。そしてあの方や小早川さんもそうです、一日毎に前に進んでおられます。

 それを見ていると自分も負けられないという気持ちが生まれてきます。



「ええ、そうですね」

 ですが、また一つみなみさんに対して私ができることがなくなってしまい、そこは少し複雑です。





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