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うちは少し早い当直の見回りを始めた。
早い言うてももう当たりは暗闇。
それでも校舎には明かりがある教室がチラホラ。
真面目に文化祭の出し物を作ってるクラス。
出し物はそこそこにダチと話してるだけのクラス。
どっちも二度ない、おもろい青春。
「あれ?」
一通り、見回ったうちは体育館に明かりが付いてることに気付く。
文化祭前日に運動部なんてやっとったか?
「なんやお前ら、まだ残っとたんか?」
そこにいたのは泉や柊姉妹や高良にアスカ達。
確かこの面子は………
こういう時の役割なんか、高良が口を開く。
「チアの練習をしておりまして」
「そうか、塩梅はどうなん?」
うちの質問に皆が笑って返す。
あの無愛想なアスカですらや。
「そりゃ楽しみやな」
「先生のどかわいた!」
間髪入れずに泉が言ってきよる、相変わらず抜け目がないやつや。
……全部で十人か、結構な値段になるけど………
「まあええか、がんばっとる若者に飲み物くらいはおごったる」
「おおラッキー!」
「いいんですか?」
ほんまにおごられるとは思われてなかったのか、泉、高良がそれぞれ予想外という、リアクションを取る。
もちろんうちかて伊達に関西弁をしゃべっとらん、きっちりと代わりのもんを要求させてもらう。
「ええってええって、こんなときやから特別な
その代わり明日の文化祭一発目盛り上げてな!」
『はい!』
元気よう返す生徒達。
これは期待させてもらってもええんちゃうか
「ってことは失敗したら、文化祭がやばいんだよな」
「アスカ、おのれはほんまに………」
相変わらず流れをぶち壊してくるアスカ。他のやつらも呆れ顔や。
「あんたねーなんでそう身も蓋もないこと言うの!?」
「ハァ!? お前にだけは言われたくないね!」
「いいからシン、飲み物買って来いよ〜」
「なんでだよ!?」
でもこいつがおったから、他のやつらも頑張れたんかもな
性別やクラスや上級生や下級生、全く関係なく、仲良うしとるこいつらを見てそんなことを思た。