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「シンちゃん、できた、できたよ!」
「皆、遅くなってごめんなさい」
学園祭前日の放課後、要するに最後の練習日。
つかさとあやのがチアの衣装を持ってきた。
生地から洋服を仕立てるまでの裁縫スキルがあったのは、結局この2人だけだっため、この日まで衣装を着ての練習はできなかった。
とはいえ、こうしてちゃんと本番までに作り上げてくれたんだから、感謝の言葉しかない。
「実際に私とひいちゃんで試着したから問題はないと、思うけど………」
「それでしたら問題はないかと、それに練習中に破ける心配もあったので、この日でよかったかもしれません」
「うむ、最後の武器はラスト前にGETッ! が王道だからね」
みゆきとこなたの2人のフォローにつかさとあやのが笑顔になる。
こういう事はこの2人がやっぱり適任だと思う。
「なあ、もう見てもいいか!?」
答えも聞かずにみさおが1着、手に取り高々とあげ他の皆がそれを見に近寄っていく。
「これってゆたかちゃんがデザインしたのよね?」
「はい、ひよりさんのお兄さんにデザインは見てもらって」
「原画より見せるのを重視したのですが…ううむ、このデキ、予想以上ッす!」
ひよりが唸るのも当然なくらい、デザインとかには疎いオレでもこの衣装の良さは分かるくらいだ。
女子だったら、なおさら………
「この下の部分の紫色がいいわよね〜、原色だと少し子供っぽく見えるし」
「真ん中の星がいいよな〜、輝いてるぜ!」
気付いた時にはすでに遅く、女子主催の衣装についての品評会が行われていた。
この為、練習は大いに遅れたのは想像の通りだ。
「いいか、これが衣装を着て最初の、そして最後の練習だ!」
『おお〜!』
衣装に身を包んだ9人を見渡す。
自信なさ気な顔をしてるのは誰もいない。
オレの方もそんなに心配はしていない。
完璧にとは言えないまでも、失敗はほぼしないくらいに出来上がっている。
オレがやれることはもう何もない
練習どおりにできれば、必ずいけるはずだ!
「じゃあ、いくぞ」
そしてオレは骨董ともいえる再生プレーヤのボタンを押す。
音楽が始まり、9人の少女達が舞い始める。