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「すみませんけど、お先に失礼するっス!」
「はいはい、頑張って」
ばたばた作業用具を鞄に入れて教室を出て行くひよりんを見送る。
ひよりんとその友達で、今度の学園祭のオープニングダンスをやるからその練習らしい。
運動嫌いなひよりんがほぼ毎日、練習に行ってるんだから雰囲気は楽しそうではある。
私も当日生徒会の用事がなければ、見に行きたいんだけど
「でもやさこいいの〜?」
「何が?」
「これじゃあひよりどこの部活に属してるか分からないよ?」
同級生のアニ研部員、山辺たまきと毒島みくが尋ねてくるが、その顔はとがめるものではない。
二人ともひよりのひいひい顔が見れて、それなりに満足なんだろう。
「まあひよりは一年だしね、今年は背表紙と四コマ数本で多めに見てやろうよ
来年は地獄だしね」
そして邪悪な笑みを浮かべる私達三人。
「……お前達怪しすぎるぞ」
一体いつの間にか入ってきたのか、呆れツッコミをいれたのはアニ研部員じゃない男子。
「あら、シンちゃん先輩いらっしゃ〜い」
「アスカ先輩、これは現実逃避ですよ」
「じゃあ作業した方がいいんじゃないか?」
シンちゃん先輩は今年の夏に知り合った一学年上の男子。
知り合ったところがゲーセンということもあってか、私とすぐに意気投合してたまにこうして部活に顔を出しに来る。
その為か他の部員とも顔馴染み。
でも唯一ひよりとだけは顔を合わせていない。
「それじゃあ私達忙しいんで帰ってもらっていいですか?」
「ちょっ! 待てよ!」
「冗談ですよ」
ウインクして返すとため息を付くアスカ先輩、相変わらずリアクションが素晴らしい。
「で何の用ですか? 先輩も学際の準備で忙しいでしょ?」
「それで相談なんだよ
こういうのって終わったらパーティをするのが常識なんだろ?」
「パーティ? ……ああ、打ち上げのことですか?」
頷くシンちゃん先輩、どうやらクラスの打ち上げ係に任命されてしまったのだろう。
そして口ぶりからすると打ち上げがよく分かんないから、聞きにきたというところだろうか。