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「アホかー!」

「うを!?」

 私は全力全開でペットボトルをこのバカな男に投げつける。

 ……受け止められたけど…ってか相変わらずどんな運動神経なのよ



「そりゃああんたの計画は穴だらけだったわよ、休憩なしの練習予定とかやけに硬くて分かりづらい連絡メールとか、

おまけに今ひとつ人の心が読めてないとか!」

「だからそう言ってるだろ!」

「でもそんなのは今更よ、全員知ってるわよ! だから皆フォローしてんじゃない!」

「だったらやっぱり」

「でもあんたがいたからみゆきはちゃんと悩みを話してくれたし、つかさは一番難しい場所で踊るって決めた」

 そしてこなたが慣れないリーダーを引き受けたのも、ゆたかちゃんの為ってのもあるけど、間違いなくあいつの為なはず。

 聞いてはいないけど分かる、あいつに気に掛けてもらえるというのは、それだけでただ嬉しいことなのだから。



「あんたにしかできないことをちゃんとやってた。それで私達はすっごい助かってた

 だから私達に不満なんてない!」



 あいつが皆を引っ張っていったから





「だから、なのか?」

「えっ」

「だからかがみは皆のフォローをしてくれてたのか?」

「えっ………」

「オレがやれると信じてくれてたから、何も言わないで抜けてるところを補ってくれてたのか?」

「ま、まあ、さすがにあんただけに全部やらせるのも、わ、悪いと思ったし、いつもに比べたら楽なもんよ………」

 一転して立場が逆転させられた。

 見ていないくせに変なところだけ見ている。

 

「妙だとは思ってたんだ、オレがミスしてもかがみ全然怒ってこないしさ」

「べ、別に、あんた私が怒るほどのミスなんてしてないじゃない」

 これは嘘。というより私が気が短いのもあって、すぐに思った言ってしまうからだ、特に目の前の男子には。

「私が怒る時は、失敗しそうだなって時だけよ

 だからそんなのが起きたら最初みたいに怒るつもりだったわよ!」

「でも、怒ってないところからしたら合格点ってところか?」

「ま、まあね」

 どうしてこういう場面だと強がってしまうのか、普通に褒めたらいいはずなのに

 ちょっと本心を吐き出せば、私と目の前の男子はもう少し仲が進展すると思うのだけど………

 おまけに結局私怒鳴っちゃってるし



「でもオレがなんとか合格点だったのも、間違ってたらかがみが止めてくれくれると思ってたから、ガムシャラにやれたのかもな」

「えっ?」

 からかってるわけではない。あいつは本当にそう思っていてくれている。

 もし些細なことで怒っていたら、純粋な笑みを今回こうして私に向けてはくれなかっただろう



 ぶつけるのもいいけど、たまには支えてみるのも悪くない





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