65
「というわけで、これでいこうと思う」
つかさの悲鳴だかなんだかの声が終わってから、オレはホワイトボードの方を向く。
そこにはしっかりとオレが言った通りに、各自の名前が書いてあった。
「何か異論があるやつは?」
小さく頷いたり、じっと自分の名をみたりと反応は各自で違うけど、どうやら反対意見はないらしい。
あるとしたらまだおろおろしてるつかさだけ
「ほらつかさ」
「あっ、う、うん」
かがみに促されて、つかさは徐々に落ち着いていく。
でもその顔にははっきりと不安と疑問があった。
「……シ、シンちゃん、わ、わたし本当に………?」
「ああ、そのつもりだけど」
震える声で聞いてくるつかさに、オレの方が自信を失ってくる。
本当につかさはできるのか?
でもその事で誰もオレに意見を言ってこない。
辛らつな事を言うことがあるこなたやみなみやみさおも、またつかさの双子の姉のかがみも。
それは皆がつかさならやれると思っているから。
疑念を抱いてるのはオレとそして当のつかさだけ。
それがこの場合どっちが正しいのか
つかさの練習に対する取り組み方、今朝見せたダンスの完成度からは一目瞭然だ
「シンちゃん、わたしにできるかな………?」
オレがここでNoといってしまったら、つかさは納得してこの場所を辞退するだろう。
でもそれは、そんなことを誰も望んじゃいない。
つかさが頑張ってるのを皆は知っているから
そしてこう聞いてくるのはつかさも迷っているからだ
だったらオレがするべきなのは
心を静め、つかさに対する妙な先入観を脳から追い払う。
今この瞬間でチアダンスの完成の精度が決まる
「ああ、つかさならできる。頼めるか?」
オレの言葉を聴いた瞬間に少し下がっていたつかさの顔が上がる。
その瞳には不安よりも嬉しさ、誇らしさが勝っていた。
「頼めるか?」
そしてオレはもう1度つかさの背中を押す
「うん、頑張るよ!」
つかさは頷く、いつもみたいに明るく朗らかに