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「みゆき、ちょっといいか」
「はい、なんでしょう?」
授業の合間の休み時間にオレはみゆきを捕まえる。
そしてオレはみゆきに書きなぐった1枚のメモを渡す。
「これで決定ですか?」
書かれてあるのは、チアダンスの各自の立ち位置。
オレが頷くとみゆきは、もう1度メモ用紙に目を通す。
わずかな時間なのにえらく長く感じられる。
そしてみゆきが顔を上げる。
「私の意見を言う前に一つだけ。泉さんには見せたのですか?」
「あいつは、そこまでは規定外って言って逃げた」
恨めしくは言ったものの本気での言葉じゃない。
実際こなた達ダンスリーダーには、個別の長所、短所といった意見はもらってるし、
ゆたかも踊る方だから、全体の様子を把握することは難しい。
だからまあオレが最終的に決めるのが妥当といえば妥当だし、納得もしている。
みゆきも承知しているだろうから、笑って頷き返した。
「では私からは言うことはありません」
「えっ」
それは問題ないということなのだろうか、それとも今回のみゆきの立場では口をはさむことじゃないってことなのか
「ですが、私もこういう経験がありますので、言わせていただきますね」
「これで大丈夫ですよ」
恭しくメモ用紙を返してくるみゆき。
抱いていた不安がなぜか消える。
「一人で決めてしまうと迷ってしまいますよね、分かります」
そのみゆきの言葉に納得した。
オレは誰かに背中を押してもらいたかったんだ
オレが考えた立ち位置は完璧なものとはいえない、もっと無難に上手くできる組み合わせもあった。
でもオレは不安定かもしれないけど、1番よくなる可能性のあるものを選んだ。
それはひょっとしたら皆の頑張りを無くしてしまう。
それをオレが決める。迷いがないわけがない
みゆきはずっと委員長やクラスの中心にいたからそれを知っていた。
だから頷いてくれた。
オレ1人よがりの考えではないと
オレはみゆきからメモ用紙を受け取る。
もうこのことで迷いはない。
「じゃあこれで行く」
「はい」
オレの自信満々の宣言に、みゆきは微笑を浮かべたままもう1度頷いた。