62
今回のチアダンスでわたしは変わったって言えることが一つだけあるの。
それは毎日早起きするようになったこと。
今までだったら、週一回のあの人の為にお弁当を作る日しか早起きをしなかったわたしが自分でもびっくり。
やっぱり人ってなんかやることがないと動けないんだね〜
「しかしよくやるわね〜朝早くから寝るギリギリまで練習して」
「衣装も作ってますしね、なんか鉄人って感じっス」
「そ、そんなことないよ〜」
朝練の着替えをしながらの会話。
みんなは褒めてくれるけどそもそもわたしは運動がすっごく苦手、だからみんなより時間が掛かってちょうどいいくらい。
それでもお姉ちゃんやこなちゃんのおかげで、最近ようやくミスが減ってきた。
これならみんなの足を引っ張らなくてすむかもとちょっと思えるようになってきたの。
「え〜朝練だからいつもの様に各自で個別練習してもらうんだけど、せっかく全員が揃ってるんだから、1回だけ通してみたい」
「は〜い」
監督役のあの人の提案に、わからないけどこなちゃんはすっごく嬉しそうに応える。
確かに朝の練習はみんな通学やクラスの準備もあるから、放課後よりも揃ったことがない気がする。
だから揃ってる時は一回でも多く合わせたいよね
「じゃあ背の順で2列にならんでくれ」
さすがにこの人数だと教室に横一列は無理だから前はわたしとこなちゃんと、ゆたかちゃんとひよりちゃん。
そして対面にはあの人がいるんだけどなんかおかしい。いつもよりずっと真剣にわたしたちの方を見てる。
やっぱりもう日がないからなのかな。
あの人は基本的にはわたしたちの踊りについては口をださない。
でもやっぱり不安だと思うの、まだ共通部分でさえ全員がミスをしないなんて、数えるほどしか成功してないから
だから今回ので少しでもあの人を安心させたい
わたしで大丈夫だったらみんなぜったい大丈夫だから
「じゃあいくぞ」
そう言うとあの人はわたしたちを見続けたまま、デッキのボタンを押したの。