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 今日のダンスの練習が終わって、いつものファミレスでいつもとはちょっと違う面子。

 わたしを除けば、ゆーちゃん、みなみちゃん、みゆきち、シンと今日は一緒にクラスの準備をしていたみゆきさん。

 このパーティ、早い話がダンスの打ち合わせ。

 みゆきさんがいるのはみなみちゃんと帰る為に待ってるんだったら、どうせなら知恵を貸してもらうため。

 そして今日の議題は



「フォーメションを考えてきた」

 そうしてシンはノートを開ける。

 どこに誰が立つのか、それを決めないとこれ以上前へは進めない。

 いや〜長かった、なんか半年くらいやってたみたいだ。

 期日的にはかなりギリギリ。

 決断が早い方のシンにしてはえらく時間が掛かったところを見ると、かなり迷ったんだろう。

 ノートを見るとうまってるポジションのほうが少ない。



「人数から考えたら、前は4人、後ろの列は5人だ

 やっぱり普通に考えたら先頭で引っ張ってきたお前達にしたい………」

 歯切れの悪いシン。理由は察しがつく。

 ただこれを言えばシンは悪役に返り咲き。

 かませ悪役が似合ってるシンだけど、さすがにそれは言わせたら可愛そう。

 仕方ないここはわたしが泥を―――



「けど、それは無理、なんだよね」

 皆の視線が言った主ゆーちゃんに集まる。

 シンは頷かない。でもそれは肯定を意味している。



 ゆーちゃんはすっごい頑張ってる。

 練習も真面目だし、家に帰ってもわたしやシンを捕まえてアドバイスを聞いている。

 ダンスの正確さで言ったら、皆とそんなに変わるわけでもない。

 ただゆーちゃんは身長が小さすぎた。

 前に立つ以上は後ろよりも、大きく動かなければいけない。

 わたしは武術をやってたこともあって、運動量には自信があるし、体や筋肉の動かし方はみんなよりもアドバンテージがある。

 だけど一年前はまだ体調をよく壊していて、運動があまりできなかったゆーちゃんにそこまで求めるのは酷だった。

 そしてそれを一番分かってるのはゆーちゃんだ。



「……ごめん、ゆたか」

「ううん、わたしは自分があんなダンスを踊れるようになっただけでも驚いてるから」

「……それはゆたかが頑張ったから」

「だな!」

「ありがとうございます、みなみちゃん、日下部先輩」

 普通に考えたら悔しくて、自分が情けなくなってしまう場面。マイペースといわれるわたしでも多分、そう思ってしまう場面。

 それなのにゆーちゃんは目にはうっすら光るものがあるけど笑ってる。自分が力が足りないって知っていて、でも前を向いて

 萌え要素に燃え要素が加わった我が従姉妹、わたしやお父さんの従姉妹がこんなにしっかりしているはずがない、とさえ思ってしまう。



「でもだからこそ、前を決めないとな」

 冷淡な態度でジュースを飲み干すシン。

 でも誰もその態度を咎めない。

 付き合いがそれなりに長いわたしやみゆきさんはともかく、

みなみちゃんもみさきちもシンがそんな人間ではないということを、今回の事を通してよく知ってるはずだから



「はい、だから絶対に大成功できるように組み合わせを考えましょう!」

 まじ立派だ、ゆーちゃん。

 そういう趣向はリアル世界では持ち合わせていないわたしですら、お持ち帰りしてなでなでしたい衝動に駆られる。

 そしてもちろんシンは……動きが不自然すぎるー!カクカクしてる! すっごくなでなでしたそうにしてる!

 スーパーエースの肩書きが霞み過ぎて、全く見えない



 …………



 ちょっとむかっ



 とりあえず私はテーブル下でシスコンパワーが暴走しつつある男にけりを入れた。





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