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「言わなくてもいい、そう勝手に思ってしまっていました。その事で他の方に心配を掛けてしまうのですね」
「後から知っても悔やむだけだからな、それはいつでも、どこでも同じだ」
この世界と前におられた世界、二つの世界で沢山の事を経験しておられるあの方。だからこそ実感がこもっています。
だから同じことは二度としたくないのでしょう、あの方は私達の誰よりも言葉の凄さを知っているのです。
「ではシンさん、これからはクラスの出し物を手伝っていただけますか?」
「ああ、みゆきに代わってしっかりやってやるさ」
あの方の力強いお言葉に、しかし私はかぶりを振ります。
『代わって』は欲しくないのです。
「いえ、そうではありません、一緒にやっていただきたいのです」
「一緒に、みゆきとか?」
「はい」
「それだったら、オレがやる意味がないだろ」
「代わるよりも一緒にやった方が作業ははかどります
それに私はシンさんにもクラスの出し物をやってもらいたいのです。楽しいですよ」
確かにチアダンスとクラスの出し物、両方やると大変です。
それはもう痛いほどに実感しました。
「みなみさんや泉さん、かがみさんやつかささん、皆さんと何かやるのはとても楽しいですし、この後もずっと思い出になります
でもクラスの皆さんとも大きな事をやるのはこれが最後です」
「あっ………」
私達は今年で卒業です。
進学される方、就職される方、別の都道府県に行かれる方、卒業してから全員が揃って会うことはもう一生ないかもしれません。
だから私は一つでも多く三年B組の皆さんと思い出を作りたいのです。
そしてその中には泉さんやつかささんもいて、あの方がいる。
それはとても素敵なことだと思うのです。
「どうでしょう?」
「そうだな、最後だな
去年同じクラスだったやつとも」
まだこの世界に慣れていない時あの方は、周りの方と衝突して壁が出来ていました。
ですが学園祭や体育祭を一緒にやるうちにあの方は私達以外の方とも打ち解けられました。
今では私達の知らない方ともお知り合いです。
「お前達も大切だけど、他にもあるんだよな」
「はい、ですから、一緒にやりませんか? 出し物の準備」
「ああ、ごめん、今までサボてって」
あの方照れた笑いを見せたのでした。