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「そうか、分かった…明日の朝の練習の時にでも聞いてみるよ」
オレはみなみからの報告を受けると、取り次いでくれたゆたかに受話器を返し、部屋に戻る。
みなみの推察によるとみゆきの悩みはどうやらクラスの出し物と関係があるらしい。
とはいえ、オレには全く心当たりがない。
作業が滞ってるわけじゃないだろうし、ある程度は実行委員の白石がやってくれてるだろう。
みゆきが困るほどの事態がクラスで起こってるとは思えないし。
とはいえあのみゆきが困っているのは事実だから………。
「わかんないよな〜」
オレはやむなく自分の部屋の前にあるこなたの部屋で足を止める。
こなたも同じクラス、そして同性だし何か分かるかもしれない。
最もこなたとみゆきは全く正反対だからあんまり期待は出来ないけど………。
「こなた〜ちょっといいか?」
…………
ノックもしたけど反応はまるでなし
どうせヘッドホンをしてPCをやってるんだろうけど、かといって簡単にドアを開けるのは危険だ。
パジャマに着替えているのも決しておかしくはない時間だし、
それにそういう事に関してはオレの引きは異常ともいえるくらいに凄い。
だけどオレだってそうそう同じ事を繰り返してはない。
ドアを開けて影から声を掛ければいいだけのことだ、この手段に気付いたのはつい最近だけどな
がちゃ
「こな………」
オレは声を途中で殺す。
理由は単純に電気がついていなかったから。
耳をすませると可愛いとはちょっと違う寝息が聞こえてくる。
「ワルイ、おやすみ」
オレは小声でそれだけ言うと退散する。
こなたも平気そうな振る舞いをしてるけど、疲れが溜まってるんだろう。
オレもなんだかんだでこなたに任せてる事が多いし、ちょっとこなたに頼りすぎかもしれない。
どうせ明日の朝練はみゆきも参加するんだし、その時でいいだろう。
「そういえば、みゆきが朝の練習くるのって初めてだよな?」
都内に住んでいて、クラスのまとめ役のみゆきは朝は全然こっちに来れない。
でも明日はクラスの人間っていってもオレやこなたやつかさだけだし、色々と聞くには都合が良い。
まあその前にオレはダンスのフォーメーションの土台を考えないといけない。
「あ〜オレ、ハゲないよな?」
当時は前線にいるのが1番大変だと思ったけど、
やっぱり後ろは後ろで大変だったんだろう、今なら色んな人の苦労が少し分かるような気がした。