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「そうなのですか、つかささんと」

「はい、とても暖かな人でした」

「私も何度もつかささんのその暖かさに励まされました」

 私の話に思い出し笑いをするみゆきさん。

 皆と別れてからこんな感じで雑談をしているけど、日下部先輩が言ったような焦りをみゆきさんからは感じられない。

 だけどつらい表情をみゆきさんは滅多に見せようとしない。

 だからどんな小さな変化でも見逃さないようにしないと………



「どうかされましたか?」

「い、いえ………

 みゆきさんの方は今日はどうでした?」

「はい、日下部さんはとても明るい方で楽しく練習ができましたし、最初は少しぎこちなかったのですけど、

小早川さんともすぐに親しくなられてましたよ」

 自分のことだけでなく、私が心配していると思ってゆたかのことも話してくれるみゆきさん。

 本当にいつも通りに見える。

 日下部先輩の気のせい?

 それだったらそれでいい。杞憂で終わるに越したことはないのだから

 ただ家まではもう少しあるのだから、色々と聞いておいた方が良い気がする。



「クラスの方の出し物の準備はどうですか?」

「みなみさんのところは…『ヅカ喫茶』というものでしたよね」

「………

 ……はい、私の相手役はゆたかなので安心ですけど、やっぱり恥ずかしいです」

「ふふ、絶対に行きますから、おられる時間が決まったら教えてくださいね」

「は、はい、お手柔らかにお願いします………」

 他人でも恥ずかしいのにやはり親しい人に、あの格好を見られたくはないけど拒否するわけにもいかない。

 どうしてあの出し物がきまってしまったのだろうか? そしてなぜ私があの役になってしまったのだろうか?

 本当に気付いたらというものだった。



「それではみなみさん、また明日」

「あっ、はい、また明日………」

 私達はいつも別れる、それぞれの家の真ん中を通っている道に付いていた。

 お互い手を振り、お互いに家へ向かう。

 私は少しだけいつもより一連の動作を遅くさせる。



 ぱたん



 みゆきさんがドアを閉める音を、確認して私は振り返る。

 最後の会話が少しひっかかった。

 みゆきさんは自分のクラスの出し物の事をあえて話題にはしないようにみえた。



 みゆきさんはこの桜藤祭でもクラスの中心になっていると聞いている。

 やはりそれの事で悩んでいるのかもしれない。

 ということは同じクラスのシン先輩にはやはり報告しておかないといけないだろう。

 みゆきさんの悩みを解決するのは別に私じゃなくてもいい、みゆきさんの不安を取り除けるのなら誰でも

 そしてシン先輩はそれが出来る人。

 私がみゆきさんにできること、できないこと

 シン先輩がみゆきさんにできること、できないこと



 今回は同じクラスのシン先輩ができそうな気がする。





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