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「ウサ目」

「ん?」

 今日はやたらと痛いところをついてくるみさおが再びオレに声を掛ける。

 とはいえ、別にみさおからは緊張感は特に感じられない。

「メガネちゃんってさーあんなに余裕なかったっけ?」

「なんだよそれ?」

「いや〜やたらと練習をせっついてきたからさ、メガネちゃんってもっと優雅なイメージがあったし」

「まあみゆきは真面目だしな、お前がサボりすぎてたんじゃないか?」

「んなことねーし!」

 口を尖らせるみさお

 まあそうしないようにみさおとはあの中でもかなり真面目なゆたかとみゆきを入れたんだし、

みさおも運動するのは好きだしそれはないか。

 となるとみさおが単純にそう感じたか、みゆきが何か気がかりがあるかのどっちかになるんだけど、

あいにくオレはそれどころじゃなかったしな



「まあそれとなく聞いてみるか」

「えっ、シンがまさかその役をやらないよね?」

「なんでだよ?」

「だってシンそんなの一番苦手じゃん」

「ぐぬぬ」

「なーにがぐぬぬだよ、その通りじゃんかよ」

 確かにそういうさりげなく相談に乗るってのはオレの得意分野じゃないけど、

みゆきが困ってるかもしれないってのならできないこともない。



「……では私が聞いてみます」

 今まで沈黙を保っていたみなみが口を開ける。

 みゆきと1番付き合いがあるから、みなみの顔には当然憂いがあった。

 とはいえ1年生でこれだけ頑張っているみなみに、これ以上のことをさせるわけにはいかない。

「いやオレがやってみせるよ」

「シン先輩では、みゆきさんは本当の事を話してくれないと思います」

「確かにシンが聞いても『なんでもありません』って笑顔で流されて終わりそう」

「だいたいメガネちゃんが困ってたとしても、ウサ目で解決できるとは思えねしな」

「それでもだな―――」

「やります、みゆきさんは私にとって大切な人ですから」

 みなみの攻撃的とも思われるくらい強い視線をオレに向けてくる。

 まるでオレじゃ頼りにならないって言われてるみたいだ。……確かにみゆきの助けになったことは少ないけど。



「クールちゃんに任せてみたらどうだ?」

「一緒に帰るみなみちゃんなら、そんな会話の流れになっても不自然じゃないしね」

 みなみの決意に打たれたのか、2人もみなみに助け舟を出す。

 まだみゆきが悩んでるか決まったわけじゃないし、みなみの方がオレより気を遣わないのは事実だろう。

 そして今1番大事なのはみゆきに何事もないことだ。

 それを誰が解決しようかなんてのは些細なことだ

「じゃあみなみお願いできるか、ただし絶対に報告はしてくれよ」

「……はい、わかりました」



 そしてみなみは何事もなかったように、先に皆のところへ歩いていった。





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