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「……なるほど」
昨夜に起きたことを登校時のバスの中でこなたの口から聞いて、私は後ろの窓の外に視線を移す。
まああいつの気持ちも理解はできるけど、やっぱり頭が固い。
どうもあいつはゆたかちゃんやつかさのような人間は、弱くて守らないといけないという概念が強すぎる。
そんなことはないと私も暗にあいつに言ってるんだけど、いまいち理解してないようだ。
「それでゆたかちゃんはどうするの、諦めちゃったの?」
「いいや、健気にも頑張ってシンに認めてもらうってさ」
「わーゆたかちゃん凄いね!」
確かにそれは凄い。 シンのあの剣幕に怯まずにそんなことを言えるのだから。
ゆたかちゃんは体がちょっと丈夫じゃないかもしれないけど、心は充分に強い。
それを分かっているのだろうか、今、バスの後ろから走ってきてる男は。
断っておくけど別にあいつはバスに乗り過ごしたわけじゃない。
現在こなたと喧嘩中だから、同じバスに乗りたくないのだ。
その割には走りやすいようにと鞄をこっちに渡してくるのだから、そんなに真剣に怒っているわけでもないのだろう。
どうせ勢いで反対して意固地になってるというところなんだろう。
「でもねー人数が足りないんだーつかさ良かったら参加してくれない?」
「うん、いいよー」
「待て待て、ちょっと待ちなさい!」
安請け合いの見本の様に特に考えもしないで頷くつかさ。
本当に同じ話を聞いていたのか怪しいとすら思えてくる。
「つかさチアダンスよ、分かってる!?」
「えっ、う、うん………難しいのこなちゃん?」
「あっ、いや、まあ、人それぞれって言うのかな〜………」
こなたもつかさの運動神経が分かってるから、お茶を濁した言葉。
帰宅部で深夜アニメを毎日見ている生粋のオタクなのに、常人離れをした運動神経のこなたはともかく、
優しく趣味は料理でちょっとおっちょこちょいと、完璧なまでの女の子のつかさがチアダンス、答えは言わずもかなである。