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「すみません、日下部先輩、足ひっぱちゃって………」

「気にすんな!」

 わたしが拳をぐぐぐっと握りつつ返した言葉に小早川はぽかんとした顔をする。



「自慢じゃないけどなわたしはあやのと柊の足どころか全体をひっぱったことなんてしょっちゅうだ! だけどわたしは気にしない!」

「して」

「しろ!」

 かな〜り遠くでなんか聞こえてくっけど無視



「それにできないからこうして練習してんだ! 踊ってるうちに体力なんてつくゼ!」

 あれ〜? なんかもっとフォローするつもりだったんだけど全然違う言葉が口からでちまった。

 とはいえ今から訂正もできねえし、突っ走るしかねえ!



「それにあんだけやったら誰でもへばるかんな! だから、ごめん!」

 最後に頭を深く下げたけど………。

 突っ走ったらもっとひどいことになってねえ、これ?



「そ、そんな頭を上げてください! そうですよね、できないからこうして練習やってるんですよね………」

 頭を上げると、小早川の瞳は笑っていた。

 わたしの言いたかったことがどこまで伝わったかわかんない、わかんないけど小早川かは自分がどうしたらいいのかに気付いたんだ。

 すっごく小さなお嬢ちゃんって感じだったけど、やっぱちげーわ。

 だてにわたしたちを率いてチアダンスをしようって言うだけのことはあるよな



「少し休憩したらまた見てください」

「おう! それとな小早川、真面目にやんのはいいけどさ、もっと楽しくやろうぜ!」

「えっ?」

「ちょっと踊ってるとき顔が怖えからな、もっと楽しい気分でやるとおもしろいと思うようになるからさ」

「はい! そうですよね、こなたお姉ちゃんにも言われてました」

 深く頷く小早川。

 そういえば従姉妹だけあってちびっこと小早川は仲良いよな〜

「あいつの場合楽したいってのもきっとあるゼ!」

「えー!? そんなことないですよー」

 それにどうやら小早川はちびっこを尊敬してるみたいだけど…なんでこんなに良いやつがちびっこみたいなのを尊敬してるんだ?

ああ良いやつだからちびっこでも尊敬するのか

 小早川に釣られるようにわたしもうんうんと頷く。



「日下部さん」

「お〜めがねちゃん」

 まるで見計らったかのようにめがねちゃんがやってくる。

 めがねちゃんほどのやつだったら、わたしと小早川が仲直りしたのを見てたかもしんない



「私のどこが悪かったでしょうか?」

「えっ!?」



 もちろんわたしは小早川と話すのに夢中で、めがねちゃんのダンスなんてまるでチェックなんてしてなかった





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