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「小早川、もうちょっと足さ、無理か?」
「えっ、あっ、はい」
自分でもわかりにくいとわかるくらいのくらいの、手振りをいれてのざっくりっとした教えにも素直に頷く小早川。
まだこの後輩がちびっこと従姉妹っていうのが信じられねー
生意気なちびっこと違って性格なんてすっげえ大人しいしだし、一年なのに代表で頑張ってし
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
「ん? ひょっとして疲れたのか?」
「す、すみません………」
「んだよ、だらしねえな」
まあ運動神経もちびっこと逆みたいだけどな。
「……すみません………」
もう一度やたら重く謝ってくる小早川。
……やべえ、部活のノリで軽く言っちまったみたいだけど、なんかマズいことを言っちまったみたいだ、小早川の顔が引きつってる。
「えっ、あっ、そ、そのなんだな………」
いつも言ったら倍返しで返してくる柊やうさ目に慣れてるから、
こういうリアクションされたらどうしていいもんやら………、わ、わかんねー!
やばい、すっげえ空気が悪いぞ
「日下部さんよろしかったら、次は私の方を見ていただけませんか?」
「えっ、お、おう!」
「小早川さんすみません、その間少し休憩ということでよろしいでしょうか?」
「は、はい、どうぞ」
あの柊すらも一目置くだけあって、あっさりとこの場を治めるめがねちゃん。
ていうか、わたしなんかよりもよっぽどリーダーに向いてる気がするんだけどな。
まあだからわたしのグループにめがねちゃんと小早川をいれたのかもしれない。
適当なわたしと真面目な二人。思った以上に楽だ。
でもさすがにわたしが足引っ張ってるのはちょっとなー
「小早川、悪かったな、きつく言っちゃってよ」
「いえいえ、本当のことですから………」
笑みを浮かべてるけど、小早川の瞳は暗い。
ほとんど話したことないけど、こんなに暗くなってる小早川は初めてだ。
どうやらわたしは柊の体重のことよりも重いものにさわちまったらしい。
「わたし昔から体力なくて、すぐ体を壊しちゃって………最近はちょっとくらい良くなったかな〜と思ってたんですけど、
やっぱりまだまだですね」
「あ〜………」
自信をつけてきたところで凹まされる、そりゃあ落ち込むよな。わたしも体育系部活動やってたし良く分かる。
とはいえわたしはさっきのめがねちゃんやあやのみたいに上手くフォーローできないしな〜
小早川のこと全然知んないし、適当なこと言うとさっきの再現で余計に場の空気が悪くなりそうだし………。