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シンの提案は悪くないように思えた。
わたしが普段口にする『フラグ』という単語、
その人に対する信頼や友情を端的に数値化したようなものだし、人に対する気持ちというもので変わるものが確かにある。
とはいえ、やはり今まであまり話したことがない人とそれを構築するのはやっぱり少々おっくうだ。
でもわたしは意外と今回のメンバーだったらそんな人はいないんじゃないかと思っていたのだけど………。
「泉ちゃん、お昼ご飯にしましょう」
峰岸さん、かがみやこのチアダンスで話すようになったみさきちという接点はあるけど、確かにこの人とはあまり話したことがない。
他のグループを見渡すとどこも今のわたしと似たような感じの分け方だ。
シンにしてはよく見れてる。
とはいえ、この状況どうしたらいい?
峰岸さんは清楚な女子高生を地で行くような、わたしとは全く反対のベクトルの人。
つかさやみゆきさんとも違うおんにゃのこ、何より二人と比べて峰岸さんとは付き合いが短い。
取っ掛かりがなさ過ぎる、これはこなた…いや冗談抜きで
「簡単なやつだけど、泉ちゃんもおひとつどう?」
そうして笑顔と共に峰岸さんが差し出してきたのは、可愛い入れ物に丁寧に入っている伯爵ことサンドイッチ。
「もらってもいいの?」
「うん、お近づきの印に」
物腰や言葉遣いから内気な人かと思いきや、かなりフレンドリー。ここらへんはさすがみさきちの嫁といったところなんだろうか。
と思いつつわたしはサンドイッチの一つを手に取る。
「これ、峰岸さんが作ったの?」
「うん、おいしくなかったらごめんね」
「いやいや、おぬしできるな」
わたしくらいに料理スキルをもっている者ならわかる。
全く乱れずに均等に切られているパン、はみ出ておらず美しく収まっている具材、それなのに野菜は瑞々しさを出している。
その上に食べやすい一口サイズで女の子らしさまでも自然に出している。
見た目は文句なし、と言っておこう、だが味はどうかなぁぁぁ!
「むぅ………」
わたしは辛うじて絶句を防ぐのが精一杯だった。
それほどまでにこのたがだがサンドイッチが美味しいのだ
ちょっと前にみさきちと、つかさと峰岸さんどちらが料理が上手いのかで口論になったのだが、
みさきちが峰岸さんを推すのも頷ける。
全くの互角。
「やるねぇ〜」
「ありがとう泉ちゃん、でもさっきの厳しい目…泉ちゃんも料理するの?」
「家は当番制だからね〜でも昼ご飯はめんどくさいしこれ」
といってわたしは来る前に寄ったパン屋の袋を振る。
そしてそこから一つを取り出して峰岸さんに差し出す。