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「連携が取れてない理由は、知らない同士が多いからだ!」

 今一つチアダンスが上手く言ってない理由をお兄ちゃんはそう説明しました。

 今回のチアダンスは学年が違ってあまり話さない人や全く知らない人とも一緒になることになりましたけど
…でもそんなに変わるものなのでしょうか………?



「それって練習とかではどうにかならないの?」

「ある程度知り合いだったらいいけど、難しいな。個別練習になると決まった人間と組むだろ?」

「あっ、うん」

 確かに思い出してみると、練習で組むのはこなたお姉ちゃんかみなみちゃん、田村さんがほとんどです。

 今日一緒に買出しに行った峰岸先輩とはほとんどお話したことがありません。



「オレの経験だけど知ってるやつとの方が、動きを合わせやすかったな」

「そうなんだ」

「もっともそれはダンスじゃなかったけどな」

 苦笑するお兄ちゃん。

 この苦笑が出る時のお兄ちゃんの瞳はどこか哀しげで、これ以上のことは今の私には聞くことができません。

 ただお兄ちゃんは私の知らない経験を沢山していて、私はいつもそれに驚かされつつ助けられています。

「それでどうするの?」

「個別練習の時にはいつも話してない同士で組むんだ。これでお互いのことを少しでも分かるんじゃないかな」

 そう言ってお兄ちゃんはノートの一部分を指します。

 そこにはすでにお兄ちゃんが考えたチームが書かれています。

 見た感じですけど、確かにあんまり話しているのを見たことがない組み合わせです。

 全員と親しい関係のお兄ちゃんだから気付けたのかもしれません。

 そしてこう見ると今こうしてこのメンバーが、揃ってチアダンスをしているというのが奇跡に思えます。



「うん、お兄ちゃんこれやろ!」

「どうしたんだよ、いきなりテンション上げて」

「えへへ、今更なんだけどすっごく大きな繋がりに感動しちゃって」

「でも、こいつがその中心っていったらその感動薄れるだろ?」

 今度は皮肉な笑みを浮かべてお兄ちゃんはお姉ちゃんの名前を指します。

 こなたお姉ちゃん

 お姉ちゃんはみんなの中心

 お姉ちゃんの周りはいつも笑顔にあふれている

 すっごく怖い顔だったお兄ちゃんも今ではこんなに笑うようになった



「ううん、そんな人がわたしの従姉妹ってことをすっごく誇らしく思うよ!」

「……真面目に返されると、そ、その困るな………」

 お兄ちゃんは気恥ずかしそうに頬をかきます。

 わたしなんかよりもずっと近くで、お姉ちゃんを見ているお兄ちゃんの方がよく分かっているのでしょう。





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