32
何度再生しただろうか
頼んでいた水羊羹を食べ切り、おかわりのストレートティーを注文しようか悩んでる時だった。
一つだけようやく気付いた。
「綺麗じゃない」
「いや、だからそれは練習がまだ」
「チーム、じゃないんです。この人達は周りを伺ってる」
全員が隣に合わせようと踊っている。それは息が合ってない証。
見て合わせようとするから僅かにズレていく、少しのズレが積み重なり目立つズレへとなっていっている。
「でもこいつら全くの寄せ集めてわけじゃないし、仲が悪いってわけじゃないのに………」
「……別段良くもないとかは?」
「そりゃあクラスも学年も違うから、普段会話しないのもいるだろうけど」
「個人間ではあってそうな人達もいますけど、このピンクの髪と緑の人とかは合ってます」
恐らく私が指摘した二人は日頃から一緒に練習しているのだろう。相手を伺わなくても自然に合っている。
しばしアスカ・シン先輩は動画を食い入るように見つめる。
「……要するに全体のチームワークってことか」
アスカ・シン先輩なら私よりもこの人達に詳しいはずだし、誰と誰が合っているかも見星がつけやすいだろう。
「はい。期間中でも一緒に行動してもらうとか」
コミックマーケットとかいうイベントの度に、妙なチームワークが生まれるこう達を思い浮かべる。
それが始まる何日前から、誰かの家にみんな泊まりこみでその準備をするらしい。そして妙な連帯感を生んでいるらしい
「とはいえ今からキャンプってのも時間ないしなー」
「……そうですか」
「とりあえずは一歩前進だな、助かったよやまと」
「別に何もしてません」
この人は案外単純な人なのかもしれない。私からみたらこのチアダンスは課題の山積み、
そんな中で少しの疑問が解けただけなのに、もう晴れ晴れとした顔をしている。
どうやら私はアスカ・シンという人を必要以上に警戒していたようだ。
まあもっとずるい人なら、こんな女の子ばかりの集団にはいられないはず。
きっとこの映像の人達は私よりもアスカ・シンのことを知っていて、私よりもアスカ・シンという人を信頼しているんだろう。
「悪いオレこれから予定があるんだ」
「えっ?」
「代金は置いとくから、釣りはお礼ってことで!」
この後の予定が時間ギリギリだったのか、言いたいことだけ言うとアスカ・シン先輩は風の様に店を出て行った。
「……いや、まあいいけど、ヒトカラも好きだし………」
でもやっぱりアスカ・シンは空気が読めない人、これは確実だ。