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「おつかれ〜今日はこの辺で」
本日最後の通しが終わり、わたしは終了を告げる。
と、同時に床にへたり込む今日の参加者達。
そしてスポーツ飲料を配って周るシン。
中々裏方作業が板についてきたね
今日は人数が少なかったから、一人一人に結構時間を割くことができた。
これで運動が苦手な三人もだいぶみんなに追いつくことができた。
でもそうなると心配なのは、今日休んだつかさなんだけど………
「おつかれ」
「どもども〜」
シンはスポーツ飲料を差し出すとそのままわたしの隣に座る。
「どうしたんだよ?」
「ん〜そだねー」
短い言葉だけどシンが何を聞きたいかは分かっている。
どうせシンのことだろうから、わたしが今日だらけきるとでも思っていたのだろう。
わたしも教室に来る前はそんな気持ちもあった。
だけどまあ、ありきたりだけど
「思ってた以上に楽しくなってきてさ」
シンの顔を見ずに言ったのはテレ隠し。
自分でも分かってる、こんなのはキャラじゃない。
リアルよりもバーチャルに熱い展開を期待するのがわたし。
ただ近頃のわたしはリアルがかなりバーチャル満載だ。
「こうやってみんなでなんかやるなんて二次元だけかと思ってた」
「そうだな」
シンもまたわたしとは違った感じ方で、バーチャルなリアルを感じてるんじゃないだろうか。
だってシンはそれこそ、戦いの中で生きてきたんだから。
そんなシンがわたし達と学校の行事でなんかする、それってかなり凄いことじゃない?
『ありがとう』
『えっ?』
出した言葉と返す言葉が全く同じなわたしとシンはあまりのシンクロに、顔を見合ってしまう。
私がお礼を言ったのは、退屈しない刺激的な毎日をくれたシンに対して。
今までの人生、もちろん楽しかったけどシンと会って変わった、記号でしか知らなかった大切なことをいっぱい知った。
シンがなんのデスティニーかこの世界に、私達の前に、私の前に来てくれたことを嬉しく思う。
でもこの超空気読めないエースパイロットは
どうせ今日わたしが練習メニューを考えたことでお礼を言ったに違いない。
そういう単純なやつなのだ、目の前の少年は。