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「つかさ、峰岸」

 休憩中、私と妹ちゃんがヘトヘトになっている時にアスカ君が声を掛けてきた。

 ……やっぱり体力なさすぎって言われるのかな?



 立ち上がった私達にアスカ君は一枚の紙を差し出す。

 ま、まさか体力UPメニュー!?



「これは………」

 だけど予想に反してその紙に書かれていたのは、衣装だった。

 紫を基調として、チアダンスの基本で動きやすそうなデザインに、

胸の上くらいにワンポイントとに大きな星が付いていて、その上絵も凄く上手!



「これが私達の衣装?」

「ああ、ゆたかが考えたんだ」

「アドバイスとより実際的な仕上げは田村さんにしてもらったんですけど」

「ううん、それでも凄いよゆたかちゃん!」

「うん、とっても可愛い!」

 私と妹ちゃんの賛辞に顔を赤くさせる小早川さん。

 年齢よりもちょっとだけ下に見えるけど、凄く可愛くて、それでいてこの企画の発案者で芯が強い。

 そりゃあアスカ君じゃなくても可愛がりたくなるのも分かる。





「できそうか?」

 アスカ君の問いに私は思わず妹ちゃんと顔を見合わせる。

 絶対というわけじゃないけど、まず私でもできる範囲の衣装だと思う。

そして妹ちゃんも表情から特別に難しいとは感じてはいないようだった。

「……多分材料さえあれば」

「……うん」

 それでも私は自信満々の声で返すことはできなかったし、妹ちゃんもそうだった。

 私もこういう時みさちゃんみたいに勢い良く返事ができたらいいんだけど………。



「じゃあ試しに1着頼めるか?」

 それでもアスカ君は気にも止めず頼んでくる。

 私の裁縫とかの姿をアスカ君は見たことないから、それだけ妹ちゃんの腕を信頼しているんだろう。

 そういえば、妹ちゃんもアスカ君のことが………



「うん、頑張ってみるね!」

 真っ赤になって頷く妹ちゃん。

 好きな人にお願いしたらそうなっちゃうよね

 妹ちゃんとは以前から顔馴染みだったけどあんまり話したことがないけど、性格とか趣味とかが合うし仲良くなれるかも。



「だったら週末に材料を買いに行かない? アスカ君も一緒に」

 ごめん柊ちゃん、こんなの見ちゃったら妹ちゃんの手助けもしたくなっちゃう



「えっオレ?」

「全員分の材料ともなると結構な量になるし、男子が来てくれた方が助かるんだけど」

「そうだな」

 よし! 私は心の中でガッツポーズ。

 最近キューピット役が楽しくなってきちゃったみたい



「だったらゆたかちゃんも一緒にこない?」

 そう提案したのはまさか、まさかの妹ちゃん。

 私の目は点に

「わたしもですか?」

「うん、やっぱり考えた人の意見も聞きたいし」

「はい、分かりました」

「うんよろしくー!」

 妹ちゃんの様子からして、アスカ君と一緒が恥ずかしいからという訳でもないみたい。

 本当に単純に、このチアダンスのためにいいものを作ろうとして小早川さんを誘ったのだろう。

 知らないうちに自分のチャンスを潰しているのに



 やっぱり柊ちゃんの双子だな

 思わず笑みがこぼれてしまう。

 似てないと柊ちゃんは言ってたけど、すっごく似てる。

 柊ちゃんも妹ちゃんも、応援したくなる





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