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そういうわけで私達は、振り付けを覚える作業へと入っていった。
時には同じ場所を繰り返し、時には立って実際にやってみたりとしたお陰で、完璧とはいわないまでも大まかな流れは把握できた。
これなら二日以内にできると思う。
「ちかれた〜変な熱が出そうだぜ〜」
「こういうのって動画としては見るのは楽しいんだけどね………」
ただ泉先輩も、日下部先輩も私も疲労困憊になってしまった。
そんな中一人、先輩だけは普段と変わらずだった。
それどころか、もうほとんど振り付けもできるようだった。
並外れた体力と集中力、みゆきさんからも聞いていたけど、実際に目にするとやはり驚いてしまう。
「じゃあダビングしたの渡しとくから家でもみとけよ、特にみさお」
「なんでわたしだけに言うんだよ!?」
「こなたは家でオレとゆたか一緒に見るからな」
「おお、もう………」
そうだ、今日これなかったみゆきさんと一緒に見よう
みゆきさんならより細かな点に気づくかもしれない
みゆきさんはやはり忙しいのだろう、結局最後まで顔を出さなかった。
おまけにみゆきさんは受験勉強で忙しい。だからなるべく私がサポートをしないと
「じゃあ今日はここで終わるからこなた、かがみ達に伝えてきてくれ」
「なんでわたし〜?」
「じゃあ片づけするか?」
「いってきます」
泉先輩は驚くほどの速さで教室を出て行った。
私達も後片付けの作業へと取り掛かる。
「……シン先輩、少し聞きたいことが………」
「なんだ?」
私も先輩も手を止めることなく言葉を交わす。
私としてはどうしてもこの疑念を今の機会に聞いておきたかった。
「どうしてかがみ先輩をリーダーに指名しなかったんですか?」
「おお、それわたしも思った」
日下部先輩が手を止めて頷くのを見て、やはり自分だけではなかったと確信する。
かがみ先輩は意見を真面目だし、まとめるのが上手いし、決断力もある。
もちろん一人の人としても魅力的な人。何より先輩と対等に話せる人。
みゆきさんが忙しいなら、かがみ先輩の力が必要だと思うのだけど………。
「かがみには迷惑掛けっぱなしだからな」
表情こそ背を向けていて見えないが先輩はきっと自嘲しているのだろう、淡々と作業する手が余計にそう思わせる。
「この前の後処理は結局かがみとみゆきにさせちゃったからな」
「でも柊はそんなこと気にするやつじゃないぞ」
みゆきさんもだ
しかし二人とも難関大学を志望し、その他にもクラスでは中心的な人物。
だけどあの二人なら
「だからだよ、だからあの2人にはこれ以上負担を掛けさせたくない」
いつか先輩は私に大切な人を守ると言った。その時の言葉に嘘はないのは知っている。
だからこそ今みゆきさんとかがみ先輩に負担を掛けている先輩自身が悔しいのだろう。
「今のオレじゃあ、今後あの2人の助けが絶対に必要だ。だけどそれは最後の手段だ
ギリギリまでは自分の力でやってみせないと、あいつ達に頼ることなんかできない」
それが先輩のこの前の反省から学んだこと。
それを感じたからかがみ先輩は、さっき何も言わずに先輩の言うことに従った。
でもきっと先輩はその事を絶対にかがみ先輩には直接言っていないだろう。
言わなくても分かる、互いに信じている。
何よりも大事にしているから
「……では私もできる限りのことをします。みゆきさんやかがみ先輩には手間を掛けさせないようにしないと」
「うし、しょうがねえわたしも柊とめがねちゃんの為に本気をだすゼ!」
日下部先輩はかがみ先輩と中学の時からのクラスメイトと聞いた。
日下部先輩とかがみ先輩のやりとりを少しだけ見たけど、案外私達三人は似ているのかもしれない。
いつも助けてもらってばかりじゃいけない
「よろしくな、みなみ、みさお」
「はい」
「おう!」
先輩が出した手に私と日下部先輩は手を重ねた。