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「とりあえず、最初にこれを見て踊れそうと思ったやつ、根性論じゃなくて正直に」

 オレの質問に手を上げたのは、こなた、かがみ、みなみ、みさおの4人。

 後は推測だけど、今は文化祭の指揮でこの場にいないみゆきもできるだろう。

 ただ今の段階ではこれを踊れるのはオレを含めて誰もいない。



「じゃあこなた、みなみ、みさおがダンスリーダーな」

「はっ!?」

「……!?」

「なあ!?」

「お前達は残れ、かがみは隣の教室で前にオレが教えた柔軟を皆に教えといてくれ」

「……分かったわ」

 かがみはこっちの事情を察してくれたんだろう。3人と違って不満を見せずに皆を連れて行ってくれた。

 残ったのはオレを含めて4人。



「なんでわたしたちがダンスリーダー?」

「ああ、頭の良さとかでは決めてないから安心しろ」

「おおぅぃウサ目〜!」

「……残した理由はなんですか?」

 オレは頷きつつ、自前で用意したダビング用のDVDをセットする。



「取りあえずある程度、覚えて踊れるやつが何人かいないと練習が進まない

 だから踊れるやつを優先で指名したんだ」

「ということは早めに覚えろと?」

「3日で覚えてくれ」

「できるか、んなん!」

「じゃあ2日」

「短くなってんじゃねえかよ!」

 手を振り回して抗議するみさおだけど、それくらい時間に余裕がない。

 もっとも原因の1つは日数を無駄に使ってしまったオレにもあるんだけど

 ただそのことでオレを責めるやつはこの輪の中にはいない。皆お人良しの集団だから。



 だから失態は自分の手で返す。

 それは絶対にこのチアダンスを皆が踊れて成功させること。だからいつもの仲良しなだけでは駄目だ。

 それはオレにしかできないこと。

 人が良くないオレにしかできないこと



「ちっ、分かったよ、ただしウサ目お前も振り付け覚えろよな!」

「みさきち、シンって覚えるの得意だよ。ねえ?」

「後1、2回見たら覚えれるな」

「謀ったな〜ウサ目!」

 とはいえ、あのアカデミーでしごかれた教官の様にはとてもできそうもない。

 根底にあるのが皆と楽しみたいというものだから

 その中にはこいつ達はオレも入れてくれているのだから



「……時間が惜しいです、今からでも見ましょう」

「ああ、オレもそうしてもらうために残ってもらったんだ」

 一頻り笑い終えた後、この中で間違いなく1番しっかりしているみなみが、再生機器のボタンを押した。





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