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「つまり」

 わたしが改めてもう一回説明する前に、お兄ちゃんが口を開きます。

 どうやらお兄ちゃんは頭の中でわたしの説明を整理してたみたいです。



「ゆたかが衣装をデザインしたいんだな?」

「う、うん、駄目?」

「いやゆたかが絵上手いのは知ってるし、取り合えず書いてみてくれ

 それで作れるかを裁縫が得意なつかさや峰岸にチェックしてもらう、それでもいいか?」

「うん」

「振り付けはひよりのお兄さんに頼むってことだよな?」

「……お兄ちゃんひょっとして考えてた?」

「いや全然だ」

 言うと同時に、お兄ちゃんは考える顔からいたずらっ子のような顔へと変わります。

 ひょっとしたらそこが一番、お兄ちゃんの中で難しかったのかもしれません。



「じゃあそれもお願いできるか? 後一応振り付けを変えてもいいかも聞いといてくれ」

「うん、もうできてるみたいだし、明日録画したものを持ってきてもらうね」

「だったらみんなを休み時間か放課後に集めるか」

 なんだか嘘のように話が進んでいきます。

 こんなにも私の言った提案が、即採用されていくなんて正直思いもしませんでした。



「じゃあひよりの方に連絡頼むな」

「うん」

「ゆたかありがとな、助かった」

「ううんわたしじゃないよ」

「ん?」

 わたし一人でこんなことを思いつくわけがないよ

 わたし一人だったら、こなたお姉ちゃんや高良先輩、お兄ちゃんには適わない。

 でもわたしにはとっても頼りになって大好きな親友がいる。

 その人達と力を合わせて考えたら、きっと先輩たちにだって負けません



「みなみちゃんと田村さんが言ってくれたんだよ!」

「そっか…2人にもありがとうって伝えといてくれ」

「うん!!」

 今決まったことをまとめようとしているのでしょうか、お兄ちゃんは机に向かいノートに忙しく書き始めました。

 お兄ちゃんの頑張ってる姿を見たいけど、邪魔をしたら悪いのでわたしは立ち上がり部屋を出て行きます。



 ゆたかありがとな



 この言葉だけでも今のわたしにはすっごく嬉しいものですから





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