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 ドアを開けて玄関に入ると見慣れたシンの靴が綺麗に、散らかってた。

 居候からの肩身の狭さかそれとも元軍人の癖なのか、

シンは意外に几帳面、にも関わらずこの現状、よっぽど興奮してたってこと。

 なんにせよ、シンは心配事を振り払ったようだ。



まあ、わたしはなんもしてないけどね



「シ〜ン、入るよー」

 返事がない。いないわけでも屍になってるわけでもないはずだから、わたしはゆっくりシンの部屋のドアを開ける。

 これでシンが着替え中なもんなら、CGゲットって流れ! ……もっとも実際にそれをされてたら、余裕なく逃げる自信がある!

 そんな微妙な覚悟は机に向かっているシンを見たら吹き飛んだ。

 返事がなかったのも、入ってきたわたしに声を掛けなかったのも無視したのではなく、集中して気づいてなかったんだろう。

 だからきっと今のシンは種割れ中。



 わたしはシンの一心不乱に書いてる姿をぽけーと眺めていた。

 というか見とれてたっていうのが正しい。今のシンは顔は見れないけど、格好いい



「こなたいたのか!?」

 シンがペンを置きこっちの方に体を向けた後の最初のリアクションは、まさにイスから飛び降りるという言い方がそのものだった。

 相変わらずのいいリアクションで、こっちも満足である。



「い、いつからいたんだよ!?」

「ん〜ちょっと前から」

 シンが驚きすぎて自分の胸にパルマ状態で尋ねてくるのを、わたしはからかい度120%の言い方で答えてあげる。

『君を見てた』って候補もあったけど、それしたら胸の鼓動がいつもより早くなってる私が確実に自爆するので今回は却下。



「なにしてたの?」

「あ、ああ、みゆきに教えてもらった練習場所の許可の取り方とか、どの先生に言えばいいかとか、

後は取り合えずの大雑把な今後のスケジュールだけど…聞きたいか?」

「いらな〜い」

 わたしの気の抜けた返しに、シンは思いっきしつんのめる。

 こけて欲しかったけど、まあ満足である。



「なんだよそれ!?」

「だってそれ書きなぐりでしょ? 聞くならある程度まとまったのを聞くよ」

「……あんたが計画についてとやかく言うか?」

「ほう、わたしの作戦立案能力を忘れたか!」

「いつだよ!? いつそんなのが発揮されたんだよ!?」

「冬と夏」

「スンマセンデシタ」

 わたしの答えにシンは体を直角にして謝罪する。

 うむうむやっぱりあれはトラウマになってたか



「というわけだからさ、わたしも計画のチェックくらいはできるから協力するよ」

「ああ頼む」

「へぇ〜」

「なんだよ?」

「別に〜」



 やっぱりみゆきさんに何かアドバイスをもらったらしく、ここ数日では一番余裕があって素直だ。

 落ち込んでるよりも前に進むシンの方が、会話するわたしも楽しいし、見ていて大変満足だ



「じゃあまた後で」

「おう!」



 扉を開けるとそこにはゆーちゃんの姿が

 わたしもびっくりだけど、ゆーちゃんもびっくり

「あっ、わたしの用は終わったんでゆーちゃんどうぞ」

「ありがとう!」

 わたしはゆっくり、ゆーちゃんはいそいで、部屋の入り口を交錯する。

 ゆーちゃんの顔を見ると、興奮しているみたいだったからきっとチアに関することだろう。

 ゆーちゃんも頑張ってるんだね



「今日はたまには本気で夕飯を作りますか!」

 私はシンの部屋のドアを閉めて、台所に向かった。





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