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 本当に久々に頭にきた

 いつものメンバーの時だけならともかく、ゆたか達のいる前ではいくらなんでも面目が丸つぶれだ。

 まがりなりにも今回はオレがリーダーなんだから、あんなことをされたら今後誰もがオレのことを疑問に思ってしまう

 だいたい聞きたいことがあるんだったら、メールなんなりもっと穏便にできなかったのか?



「!」

 苛立っていても後ろから近づいてくる気配に気づかないほどじゃない

 相手に気づかれないくらいに小さく舌打ちをして、オレは振り向く

 そして最初に目に飛び込んできたのは桃色の髪



「ラ…ク………」

 目の前にいたのはとても信じられない人物だった

 オレと面識がなく、この世界にいないはずの人物



「ど、どうかされましたか?」

 その声と共に、目の前の女の顔が消える。

 こっちに心配そうな顔を向けてくる少女の顔は、もう馴染みがあるものだった。



「……いやなんでもない」

 言葉と共に小さく息を吐く。さっきよりも視界が明るくなった。

 そういえばこの世界に来た当初は、しょっちゅう幻覚を見ていた。

 今にして思えばあれはオレの心に余裕が全くなかったからだろう。



 ……ということは今もか



「……かがみ呆れたかな?」

 ここに来てようやくオレの頭が冷えてきた。



 自分だって煮え切らない部隊長を、公衆の前で罵倒したことが何度もあった。

 その時は相手の立場なんて全く考えてなかった、ただ自分の個人的な感情をぶつけただけ。

 だけどさっきのは違う、かがみだけじゃなく隣のクラスのみさおとあやの、ゆたか達1年生がやってきていた。

 皆が疑問に思っていた事を1番言えるかがみが言っただけ。

 それなのにオレは



「大丈夫です、かがみさんはそんな人ではありません」

 みゆきの慰めの言葉が逆に痛い。

 オレはかがみに本当に腹を立てていたのだから

「オレには無理なのかな、皆を引っ張るのは………」

「まだ何もしてませんよ」

 みゆきが笑う。

 それがいつもの微笑なのか、呆れた笑みなのか、今のオレにはまるで分からない。





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