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田村さんが座られて、集まった人数は私を含めて九人、いえ、あの方を合わせて十人。
目的の最低限の人数はクリアできました。
「多分、このメンバーで行くことになりそうだね」
泉さんの言葉に小早川さんが頷き、立ち上がられます。
今回のことは小早川さんが発起人ということですが………。
「今回はわたしのわがままに集まっていただいて、三年生のみなさんは受験が控えている方も多いのに、本当にありがとうございます
わたしは言いだしっぺなのに、足を引っ張ることが多いと思いますけど、
絶対にこのチアダンスをやりとげたいです、よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げる小早川さんに私達は拍手で答えます。
小早川さんは少し前にお会いした時よりも、しっかりされている感じを受けました。
おそらくみなみさんと互いに良い方向で、影響を与え合っているんだと思います。
そこは私達と変わりません、泉さんがいて、かがみさんがいて、つかささんがいて、そしてあの方がいる。
だから私は変わっていけたのです。
さて拍手が鳴り止むと、沈黙が生まれました。
そして私を含めて皆さんの視線がお一方のもとに集まります。
「……なんだよ?」
「いや〜ゆーちゃんは頑張ったから次は自称『兄』の人の出番かなって、みんながwktkしてるとこ♪」
やや居直り気味のあの方を相手にあっさりと切り返される泉さん。ここら辺はもはや職人芸といえます。
とはいえ、あの方が小早川さんに一言言わなければ進まないのは事実です。
最初の頃のあの方ならこのような状況だったら怒って教室を出て行かれたかもしれません。
でも今は
「その、悪かったこなた………」
「いや、謝る相手はわたしじゃないし」
「うっ………」
お二人のやりとりに私とかがみさんとつかささんは苦笑を浮かべます。
素直に言えないのは、最初に会った時から変わっておられません。
「ゆたかごめん! 一方的にゆたかの言葉を否定したりして、ゆたかはずっと頑張ってきたのに、本当にごめん!」
ですが間違いなく、一番変わられたのはあの方です。
「ううん、お兄ちゃんはわたしを心配して言ってくれたから…参加してくれるの?」
「いいか?」
「うん!」
まるで本当の兄妹、そう言ったら小早川さんは怒られるでしょうか?
あの方と小早川さんは私とみなみさんとの関係とはちょっと違うのですから
「ありがとう。オレはチアに参加することはできないからさ」
「男の娘ですね、分かります!」
「そうか、その手があったっスか!」
「あるか!! そうじゃなくて、オレはサポート全般をするからお前達はチアにだけ集中してくれたらいい」
「……シンさん、お一人でという事ですか?」
「ああ、まかせろ!」
皆さんの代わりとして質問した私にあの方は胸を叩かれます。
確かにあの方は私達ができない事ができて、知らない知識を知っておられますし、この中で全員とお知り合いなのはあの方だけです。
そういった意味でもあの方がサポートをして下さるのはとても心強いのですが………。
「じゃあシンに丸投げでOKだね!」
「だな、ウサ目はやるときゃやるやつだってわたしは思ってたゼ!」
皆さんもあの方の熱意と能力を分かっておられるから、反対意見は特には出ませんでした。
もちろん、私も反対する理由がありません。
ですが
「ねえ、みゆき」
「はい、なんでしょう?」
「焚きつけたのは私だけど、こういう場合あいつって大概間違った方向に進まない?」
眉を寄せながらおっしゃるかがみさんの言葉を、私は杞憂とはとても言えませんでした。