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「こなた、ハメたな!?」
「なに昔のスキルをフル活用してつまみ食いしてんの!?」
「いや、そ、その………」
こなちゃんの追求に突然現れたあの人はしどろもどろ。
わたしはというと未だ状況に追いつけてません
「美味しそうな香りがしてたから、いつのまにかここに来てた
な…何を言ってるのかわからねーと思うが―――」
「分かるわ!」
こなちゃんのジャンプキックがあの人に炸裂。
なんかどことなく、いつもよりも鋭いキックな気がする。
「ただのつまみ食いじゃん! やるんだったら口から光線とか料理系のネタで表現しなさい!」
「そっち!?」
「結構利いたぞ今の!」
おろおろしてるわたしの横であの人は立ち上がる。
その手には形を変えることなく、プリンとゼリーが。
やっぱり凄い運動神経!
「悪かったって」
「とか、言いながら普通に食べるか………」
「うまい」
「うん、うまい」
もう一回だけあの人はすっごく短く呟いたの。笑った顔で
「つかさってどんどん上手くなってるよな料理、最初らへんはちょっと上くらいだったのに」
「そ、そうかな?」
「ああ、毎週食べてるオレが言ってんだからな」
それはわたしを見ててくれてるってこと
だってわたしも分かるもん、あの人の些細な気持ちが。
だっていつも見てるから
きっとそれと同じことだよね
「え〜わたしに対するコメントは?」
「あるか」
「シ、シンちゃん………」
いくらこなちゃんとあの人が、冗談を言える関係でも今のは………
こなちゃん泣きそうで怒ったような顔してるよ?
「ほら」
でも、こなちゃんが何か言い返す前に、あの人はこなちゃんにキツネのぬいぐるみを放り投げた。
「やる。負けまくってそれしか残らなかったけど、それで、いい加減、機嫌直せ」
ちょっとぶっきらぼうに、そしてその時のあの人は少し年下の男の子に見えちゃう。
たぶん、弟がいたらこんな感じ。
わたしはそんなあの人も可愛くて好き。
きっとこなちゃんも
「おK!」
ぬいぐるみをしげしげと見て、上がった顔のこなちゃんはもういつものこなちゃん。
「今日は特別だ! わたしとつかさが今日の夕飯を引き受けた!」
「おお、マジか!? それは期待できる!」
「えっ、わたしも〜?」
その日はとっても豪華な夕飯でした