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「先輩、良いんですか? こんなところで油売ってて」
「なんだよ?」
ゲーセン内でのライバルであり、今はガンゲーの相方である八坂こうが、こっちを見ずに聞いてくる。
「受験生でしょ、知ってますよ〜」
「……諦めてんでしょ」
「違う」
こうと共に怖い茶々をいれてくるやまとを、これまたオレも画面を見たまんまで答える。
「ストレス解消だよ、ストレス解消。お前達には分からないだろうけどな」
「……わりかし軟弱な精神なんですね」
「やまと〜世の中には言っちゃあならないことってのがあるんだよ、例えそれが的を射ていても」
「お前達ー! あっ」
と同時にオレがゾンビに襲われてリタイヤしてしまった。
「シンちゃん先輩だめですね〜ガンゲー」
「あんなんガンじゃねえ、大体リロードが画面外に撃ったらってなんだよ!?
そもそもあれは単発式だろ、なんでマシンガンみたいに銃爪がだな」
「そんだけ吠えるんだから戦場にでも言ったらどうですか? ……なにか?」
「いや、なんでも」
まさか1年ちょい前には、銃よりもぶっそうなものを使って戦場を駆けずり回ってたなんて言えるわけがない。
というか言ってもこうには笑われ、やまとには呆れられるのは目に見えてるけど。
「で、どうですか、ストレスは飛びました?」
「まあまあかな」
取りあえず一通りゲーセン内でのゲームをやっての感想。
いつも格ゲーくらいしかしてなかったけど、たまにはこういうのもいいかもしれない。
ただし莫大な資金が必要だったけど
「そのぬいぐるみはどうするの?」
「あ〜そうだな………」
なぜか今回は異常に相性がよかったクレーンフィーバー、おかげでぬいぐるみが数個程取れた。
とはいえ鞄には入らないし、手で持つには男として抵抗があるラインナップなんだけど………。
「いいや、持って帰る」
「え〜そこは『今日付き合わせて悪かったな、ほらこれ全部やるよ』でしょ、フラグ取れませんよ〜」
「今の言葉でかけらも上げる気を亡くしたね」
「……こうのせいだから」
「ちょ、やまとなんで!?」
一瞬、渡したらあいつ達喜ぶかな、なんてことを考えてしまった自分をムチャクチャ殴りたい。
そんなもんを渡さなくても感謝の気持ちはいつも持っているし、
伝え……てない時もあるかもしれないけど、多分あいつ達には伝わってるはずなのにな
「よーし、こう、ぬいぐるみを賭けてどうだよ?」
「のった!」
「オレが勝ったら、次からゲーセン内ではオレのことを『デスティニー』と呼びかけろよ」
「ハズッ!」
「こう、負けたら絶交だから」
「ええ!? なんか負けたら終わりっぽくない私!?」