「クソッ!」

 負けが決まった瞬間にオレは席を立ち、向かいの台にいるこうの方へと向かう。



「あれ? もう終わりですか?」

「違うっての、気分転換」

 現在2勝2敗のタイ。

 つまり次で勝負が決まる。

 別に負けても、何もないけどやるからには当然勝ちたい



「とはいえブランクがあるからな」

 やはり今年に入って、受験勉強していたオレとまだ2年生のこうとではやりこんでる時間が違う。

 オレの勝ちは僅差、負けは惨敗ときてる。

「ふっふっふ、パワーアップした私にはシンちゃん先輩など敵ではない。そう、かませでしかない!」

「なんだと!?」

 見え透いた挑発なのに、オレは声を荒げてしまう。

 知り合ったのは半年前だけど、時間的にはゲーセンくらいでしか会っていないのに、こうは着実にオレの怒りのポイントを熟知していた。

 それはこうが観察眼にすぐれているのか、それともオレが単純なのか



「そんなに練習したんなら、例の小さな女の子に勝てるんじゃないか?」

 オレのふとわいた疑問に、こうは頭をかきながら苦笑する。

「いや〜多分まだ無理ですね〜よくて四対六くらい」

「そんなに強いのかよ、ソイツは!?」

 思わずオレは声をあげてしまう。

 負けたからってわけじゃないけど、こうの腕前はかなりのもんだ。

 そのこうをもってしても、勝てないと言わしめる女の子。

 しかもオレ達よりも年下らしい。

 完全に都市伝説の域だ。



「なんていうか、最強ってなれないもんだな………」

「ちょっ、どうしたんです、そんなにしみじみと!?」



 吐いた呟きはそんなに重かったのか、こうが驚きの様子でオレを見てきた。





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