『Is not the present gotten?』





 学校帰りに少しばっかり時間があるからと、ゲーセンに寄ってみれば、見知った姿に出会った。

 それは残念ながら宿敵のあのチビスケではない。

 ないけれど、ライバルの一人。



「ちーっす、シンちゃん先輩♪」

「ああ、こうか」

 私の姿をチラ見だけして、シンちゃん先輩はすぐに画面の方に向き直る。

 愛想がないと思うのはシロート。

 ゲーム中は大概、誰でもこんなもん

 目を離したらそれは死を意味する



「いいんすか、こんなところでこんなことしてて」

 対戦相手がCPUということもあって、私は会話を続ける。

「何か問題あるか?」

「受験生ー!」

 私は大仰なポーズでシンちゃん先輩の背中に突っ込みを入れる。

 大概の三年生は今の時期はそりゃもう修羅場も修羅場。

 って来年、私もそれを経験するんだろーな、いやだいやだ



「オレ終わったし」

「ああ、ご愁傷様です」

「そっちじゃない!」

 デモ画面中もあって、シンちゃん先輩が左手で私に突っ込む。



「オレはこの前の土日で試験が終わったんだよ」

「受かってる確率は?」

「スポーツ漫画の主人公チームくらい」

 シンちゃん先輩の学力はどんなもんか知んないけど、それだったらきっとパスできてるだろう。

 じゃあいいかな



 私はシンちゃん先輩の側を離れて向かいの台へ、そして財布から硬貨を取り出す。



 ちゃりん



「じゃあ勝負しましょう!」

 呆気にとられるシンちゃん先輩、でもすぐにその顔は不敵な笑みが浮かぶ。

「ふん、どんなヤツだろうと戦ってやるさ!」





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