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「そっかーお兄ちゃん来たんだー残念」
私からお弁当を受け取った小早川さんの一言目がそれだった。
小早川さんはあの人を兄として接してると思っているけど、私は知っている、その感情はみゆきさんが抱いてるものと同じもの。
「あっ、岩崎さんありがとう、変わりにお弁当を受け取ってくれて」
「……当たり前の事をしただけ………」
「えへへ」
元々感謝されるのが苦手で冷たい態度を取ってしまう私。
そんな私に怒る事無く、笑顔で接してくれる小早川さん。
高校に入学して最初に知り合ったのがこんなにも優しい人で良かったし、嬉しい。
だから私は小早川さんにも泣いてほしくない。
でも、きっと、先輩は小早川さんも泣かしてしまう。
させないそんな事
「今日はね、わたしがお料理当番なんだよ。
それでね、こなたお姉ちゃんに新しいお料理教えてもらうんだ」
嬉しそうに話す小早川さんを見ていると、それだけで私も暖かい気持ちになる。
もっとこうしていたい。
だから私は歩幅をゆっくりと小さくする。
「ごめんね、わたしのせいで」
でも、それに気付かれてしまった。
本当に小早川さんは良く見ている、私なんかの事を
『あ〜あ、補習だよ』
『ですが、前よりも点数は上がっています。頑張りましょう』
だけど、そんな幸せな時間は後ろからの人物によって潰された。