7
許せない
絶対に許せない
裏切られた
別に私とその人とは、特別親しいという間柄ではなかった。
親しい人達を通しての知り合い程度。
ただその親しい人達は、その人の事をとても慕っている、その事を私はとても知っている。
きっとその人も、好意を持たれているという事は分かっているはず。
だから許せなかった、他の女の人に囲まれてにやけている、その人を
『シンちゃん?』
『どうしたの?』
その人と一緒にいた女の子達が尋ねていた。
もう限界
これ以上あんな光景を見たくはなく、私はその場を後にした。
私はその人を誤解していた。
姉の様に慕う人と親友が想いを募らせているのだから、きっと悪い人じゃない
そう思っていたし、実際にその人の口調は少し乱暴なところがあるものの、行動や言動から好感を持っていた。
しかし、今日の、さっきので、全てが覆った。
騙されていた、私も、みゆきさんも、小早川さんも
「――なみさん? みなみさん?」
「えっ?」
気が付くと、自分の家の前で、みゆきさんに呼び止められていた。
「どうかされましたか、顔色がお悪い様ですが?」
「……なんでもないです」
言えない、言えるわけがない
貴方が慕っている男の人は、実は他の女の人達と仲良くやっています
そんな事を言ってしまえば、みゆきさんを悲しませてしまう。
私は見たくない、姉とも呼べる人のそんな顔を。
「そうですか………、何か悩み事があれば相談に乗りますので、いつでも仰って下さい」
「……はい、ありがとうございます………。
今日は失礼します………」
私はそれだけ言うと、逃げる様に家に入っていった。