「てか、良かったんですか?」

「何がだ?」

 オレは2人がメイクしてる部屋からそう遠くない位置で待っていた。

 この人を信用してないわけじゃないが、ここなら何があってもすぐにあの2人を助けに行ける。



「モデルですよ。あんな簡単に決めちゃって」

「問題ないだろ。というか、あの子たちくらいのレベルが来ないと困るからなー。

 ……まさかとは思うが、あの子たちが普通レベルとか思ってないだろうな?」

 思ってはいないけど、毎日顔を合わせてるとそんな事を気にしなくなる。

 それに

「オレは別にあいつ達が可愛いから一緒にいるってわけじゃないですから」



 あいつ達の笑顔を絶やしたくない、ずっと見ていたいから、オレはあいつ達と一緒にいる。

 どんな事をしてもあいつ達を守ってみせる



「だろうな、もっと別の理由だろうな。一緒にいるのは彼女達もキミも、お互い必要なんだろう」

「なんでそんな事が分かるんです?」

 湧いたのは単純な疑問。

 オレはこの人と数えるほどしか話していない。

 しかもそのどれもが、店員とお客としての立場のもののはずだった。

 なのにオレ達の関係、最低でもオレがそう思ってる関係を見透かされた気がしたから。



「俺はアニメ店長だ! 伊達にお客様の事をずっと見ていない!!」

 煙に巻かれた、いつも通りの暑苦しいポーズでそう言ったのに、オレは何故かそう思った。





 撮影も無事終わり、オレ達は再びぶらぶらと商店街を歩いていた。

「シンちゃん、どうこれ? 可愛い? 可愛い?」

 つかさが見せているのは、記念に撮った2人のフォトだ。

 しかし、これバレないか?

 見る人が見たらつかさとかがみだという事は分かるはずだ。

 まあ、バレたらオレがなんとかしよう



「ちょっと下ばっか向いてないで答えなさいよ」

「ん? そうだなー」

 こんな小さな画像を見なくたって、オレには2人の笑顔がちゃんと記憶されている。



「綺麗だぞ」

『ホント!?』

「ああ、さすがプロのメイクだよな〜。これならどんなヤツでもモデルだな」

「なんですって〜!?」

「シンちゃん、ひどいよ〜」



 かがみの怒声を流しつつ、つかさをなだめる。

 やっぱりオレに取って―――



「っ!?」

 その時オレは何か感じ、弾かれる様に振り向いた。

「シンちゃん?」

「どうしたの?」

「……いや、気のせいだ」

 オレはすぐに表情を戻す。

 もちろん気のせいなんかじゃない。

 あれに似た視線をオレは元の世界で何度も感じ、浴びてきた。



 すなわち敵意





戻る   別の日常を見る    進める