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私達はあっという間に兄沢さんによって、スタジオに連れてこられた。
「じゃあ、まずは染髪から始めるわね。
これはシャンプーしたら色が落ちるやつだから。どれにする?」
私は金色、つかさは水色をお互いに選んだ。
でも、本当にこんなんで分からなくなるのかしら?
「大丈夫、大丈夫、髪の色をガラッと変えるだけで結構分からなくなるもんよ。
なんなら顔にメイキャップする?」
笑いながら、尋ねてくるメイクさんに私とつかさの緊張が解ける。
よかった、これなら質問しやすい
そもそも兄沢さんの頼みを引き受けたのは、打算あっての事だった。
そうでもなきゃ、こんな恥ずかしい事普通はしない。
ま、まあ、私達のせいで兄沢さんがクビになるのも寝覚めが悪いしね!
「あ、あのー」
「ん? なーに?」
聞き返され思わず、口ごもる。
厚かましいやつと思われるかもしれない………。
ええーい! 女は度胸! 何を躊躇う柊かがみ!
「き、綺麗に見える化粧って、ど、どうしたらいいんですか!?」
「えっ?」
言った、言っちゃったー!
そう、私の狙いはこれ。
プロのメイクの人に化粧のテクニックを聞く。
別に見かけが少し変わったくらいであいつが急に私に振り向いてくれるとは思えない。
でもやらないより、やってみた方が絶対に意味はある
「あっ! そういうことだったんだー!」
手をぽんと叩くつかさ…って
「気付いてなかったの!?」
「うん」
「よく、それで私に付いて来る気になったわね!?」
「えへへ」
恥ずかしそうに笑うつかさ。
なんというか、我が妹ながら呆れる。
でも、きっと私を信頼してくれての行動なんだろう。
こんなんだから、私はつかさを出し抜けない。
こんなに何も疑わずに信頼されたら、そりゃ裏切る気も起きない。
きっとあいつもそうなのよね
「そうねーかがみちゃん? はぱっちりしてるから、そこ強調した感じに。
つかさちゃんは…肌が綺麗だからナチュラルメイクを主に………。
じゃあ今回はそれで行きましょうか?」
『はい!』
「それはやっぱり、一緒にいた『彼』の為かしらね?」
「うっ………」
「あうっ」
恋愛経験が少ないからこんな鎌かけにのってしまう。
隣を見たら分かる、自分がどれだけ今顔を真っ赤にしてるかという事を。
「その『彼』は、ひょっとして時間を潰す事なく、待ってるのかしらね?」
あいつはきっと悲鳴を上げたらすぐに飛んでこれる場所にいるんだろう。
あいつはそういうやつ
『はい!!』
「あらあら、どっちが付き合ってるの? それとも鍔迫り合い中?」
恋愛経験が少ないから墓穴を掘る。
メイクが終わる間、私達姉妹はずっとからかわれる事となった。