「やっぱりネット告知だけじゃ人が集まらんのだ!

 今回はネットアイドル声優だし、社内の美女もコンセプト的に使えん!

 かといってギャル系を連れてきてもダメだし………。

 このままいくと俺は、俺は……クビになってしまう!!」

「で、でも………」

 クビにされるのは可哀想だし、でも、そんなのポスターのモデルなんて恥ずかしすぎるし、お姉ちゃんはともかく、わたしなんて………。

「でも私達、受験生だし………」

「大丈夫だ、今日三時間、いや、二時間! それ以内に終わらせる!」

「一応、進学校だし………」

「髪の色さえ変えれば、どうとでも言える! いや言わせてみせる!!」

 困ってあの人の方を見ると、あの人も同じ顔。

 そう、だよね。

 誘われてるのはわたしたちなんだもん、わたしたちが決めないと。

 いつもあの人がどうにかしてくれるって思ってたらいけないよね。

 甘えてちゃダメだよね。



「兄沢さん」



 言ったのはわたしじゃなくて、お姉ちゃんだった。



「なんだ?」

「もし写真取る事になったら、メイクとかもするんですよね?」

「ああ……もちろん、念の為にプロも待機させてるが………」

「……分かりました、やります」

「ホントか!?」

「ポスターだけですけどね」

「お、お姉ちゃん………」

「つかさも行こ!」

 唖然としてるわたしを見るお姉ちゃんの顔はすっごく嬉しそう。



 わたしは知ってる



 この顔の時のお姉ちゃんは、いい考えが浮かんだ時。そしてそれはきっと、あの人に関係すること。



 だからわたしを誘ってくれる

 お姉ちゃんはそんな人



「うん」

「お、おいつかさ、本当にいいのかよ?」

「大丈夫だよ」

「そっか。かがみも一緒だもんな」

 わたしがいかにお姉ちゃんに頼ってるか分かってるあの人。

 だからもうそれ以上なにも言わない。そして少し笑みを浮べて

「行って来い、待ってるからさ」



 見送ってくれる





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