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「嫌です」
「早っ!?」
お姉ちゃんの即答にお笑い芸人みたいなオーバーリアクションの兄沢さん。
「キミはどうだ! ん!?」
でもすぐに立ち直って、熱い瞳でわたしの方を見てきたの。
「え、えっと………」
「ネットアイドル声優になったら、キャーキャー言われるぞ!
テレビにも出られるかもしれないぞ!
友達にも自慢できるぞ!
アニメイトのポイントが2倍になるぞ!」
「え、えっと、あの………」
「お断りします!!」
思わず勢いで頷きそうになる前に、お姉ちゃんが割って入ってくれたの。
「なぜだっ!?」
一歩前に出てくる兄沢さん。
「別に私達アイドルになりたくないです!」
わたしを一歩後ろに下げるお姉ちゃん。
「キャーキャー言われたくないのか!?」
「結構です!」
「最近はビジュアル系オタクとかもいるんだぞ!?」
「そこが問題じゃないんです!」
「……店長、本人が嫌がってるのを誘うのはどうかと思いますけど?」
あの人が仲裁に入ったんだけど、少し怒ってるみたい………、ど、どうしよ〜?
「……そうだな、すまなかった」
『えっ?』
勢いと違って、あっさりと引き下がる兄沢さん………。
様子からあの人に恐れをなしたとかそんなんじゃないみたいだけど………。
「無理矢理させたものにお客様は、手をつけてくれない。
少なくとも俺はそう思って仕事している」
そう語る兄沢さんの顔はすっごく大人に見えた。
「……店長」
『兄沢さん………』
「だから!」
「頼む! せめて募集ポスターのモデルになってくれ!!」
『わかってねぇえぇぇ!!!』
お姉ちゃんとあの人は見事なまでのハモリを聞かせてくれたの。