13


「……親友が恋のライバルなのですか?」

 しばらく考えて出した結論に頷くみゆきさん。

「そう言えば言っていませんでしたね、すみません」

 恐らく言っても私は信じられないだろう、いや、今も信じられない。

 親友と呼べる人達と争うのだ。自分に例えれば小早川さんと一人の男性を巡って戦うのだ。

 そんな事は考えただけでも、途方にくれるしかない。

 それなのにみゆきさんは嬉しそうにいや、それどころか、どこか誇らしげにすら見える。

 それほどまでにみゆきさんとあの女性達の絆は固いのだろうか。少し羨ましい。



 でも



「……ですが、先輩も嬉しそうでした、みゆきさんいる時と一緒くらいに」

 みゆきさん達が例え強固な絆で?がっていても、先輩から見たら、数ある女子の一人に過ぎない。

「そこが泣き所といえば、泣き所なのでしょうか」

 今度はみゆきさんの困った笑み。

 先輩の話になると、みゆきさんの表情は次々と変わる。



「シンさんにとっては、私もその女性の方達も一緒なんです。『大切な人』という枠で」

 何でも出切るみゆきさんだけど、言い切る事は少ない。

 でも裏を返せばそれだけ自信があるという事。



「……信じられません」

 私は正直に告げる。

 そんな関係なんてあり得るとはとても思えない。

 みゆきさんは優しいから騙されているのではないだろうか?



「ですから、直接シンさんと話して下さいませんか?」

「……えっ?」

「みなみさんがシンさんと話して、判断なさって下さい

 何も話さずにただ勝手に思っているだけでは、誤解は深まるばかりです」

「……でも、先輩がそれに応じてくれるかは………」

 もしもみゆきさんが言った関係が本当だとすれば、先輩は私の取った行動にもの凄い怒りを覚えているだろう。

 さっきまでの私の様に



「大丈夫ですよ、私が頼みますから」

 そう言うと、みゆきさんは鞄を開け始める。

「……どうして、そんなに………?」

 手を尽くすのか、私はみゆきさんにいらぬ迷惑を掛けただけなのに



「私にとって、シンさんと同じくらいにみなみさんは大切な存在ですから」



 みゆきさんは携帯を耳に当てながら、優しい笑みを浮かべた。





戻る   別の日常を見る    進める