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「みなみさん、みなみさん! 止まってください!」
少し後ろを振り返る、先輩の姿は見えない。
そこで初めて小早川さんを置いてきてしまった事に気付く。
小早川さんに危害を加えるとはさすがに思っていない、でも先輩の近くにいさせるわけには………
「みなみさん」
戻ろうとする、私にみゆきさんが立ちはだかる。
「どうしてこんな事をしたのですか?」
その顔にいつもの笑みはなかった。
「……知ってしまったんです………」
「何をですか?」
答えるかどうか、迷ってしまう。
これを言えば、みゆきさんを悲しませてしまう。
だから言いたくはない。
「言って下さい
言ってもらわないと、逆に気になってしまいます」
そう言うとみゆきさんは微笑む。
その笑顔には怒りがない、私がした突然の行動も許してしまえる。
そしてちゃんと言い分を聞いてくる。
それがみゆきさん、私の尊敬する人。
「……私、見てしまったんです」
私は話さなくてはならない、みゆきさんの前では隠し事はしたくないから。
「……昨日、日曜日に」
「別の女性の方達と歩いているところをですか?」
「……えっ!?」
次に言う言葉を当てられて、私は呆然となる。
「その女性の方は、菫色の髪の長い方と短い方、見た目的にも姉妹の御二方ではないですか?」
「……どうして………?」
怒りの余りよく見てはいなかったけど、言われてみたら確かにそんな感じの女性だった。
「ええ、存じてますよ、その方達は。
そしてその日、シンさんがその御二人と出掛けるという事も」
私には異性の好きな人が出来た事がないから、分からないけど、本やドラマではこういう時は悔しそうに言うもののはず。
でもみゆきさんにはそんな様子がまるで見られない。
それはみゆきさんの人柄だから………?
「ちなみにその方達は私の親友なんです」
私の反応を見て面白そうに語るみゆきさん。
私は完全に理解不能に陥っていた。